top of page

予測不能な“動き続ける展覧会”


前置きが長くなるが、2014年、国際交流基金アジアセンターの主催でアジアの音楽交流プロジェクト「アンサンブルズ・アジア」が始動した。音楽家・大友良英がアーティスティック・ディレクターを務める同プロジェクトは3つの活動が軸となっている。ひとつは「アジアン・ミュージック・ネットワーク」、もうひとつは「アンサンブル・アジア・オーケストラ」、そして「アジアン・サウンズ・リサーチ」。このアジアン・サウンズ・リサーチの打ちだす新しい形式の展覧会「OPEN GATE」が、あいちトリエンナーレ2016のラインアップとして日本で初めて公開された。

プロジェクト・ディレクターはSachiko M。彼女は、大友が音楽監督を務めたNHK「あまちゃん」の作曲に参加して茶の間にもその音楽性を知らしめ、特に大友と共作した「潮騒のメモリー」で大きな反響を呼んだ。そんなSachiko Mが中心となるアジアン・サウンズ・リサーチは、音の表現や実験をアジア各地のアーティストとともに調査。さらに、それを美術の領域と越境しあう形で発表する。付いた副題は「動き続ける展覧会」。2015年、マレーシアのペナン島で第1回「OPEN GATE」を開催した彼女たちは、主導的立場は置かず、フラットな関係における出会いやインスピレーションを重視している。Sachiko Mに尋ねた。

「私自身は10月1日にマレーシアから帰国して、そのまま愛知入りしました。他のアーティストやミュージシャンも各人バラバラに入ってきては、〈場〉を見てプランを練り、思い思いに作業をしています。それぞれに私から大まかなディレクションを出すこともありますが、たいていは放置(笑)。場の持つ雰囲気をわかってもらって、みんなで一緒に作っていく感じですね。何か大きい力で動かすのではなく、丁寧にやることで面白いものになっていくと思っています」

Adam Kitingan(右)とSachiko M(アジアン・サウンズ・リサーチ プロジェクトディレクター)

photo by 渡部勇介

会場は、岡崎シビコの屋上。10月6日から連休終わりまでの5日間、15時に場が開かれ、日没をメドにパフォーマンスも行われる。準備中の現場を取材した日もそうだったが、天候に左右される性質上、不安材料は尽きない!? でも、予測不能な状況こそが期待を煽る!

「屋上は白い床の反射がすごく、暑い地域のメンバーさえ日焼けで苦労するほど(苦笑)。また、雨が降ると水たまりができて大変ですけど、それがキレイでもあるんですよ(笑)。風を生かしたアイデアを考えている人もいますね。こちらに来てから『竹が必要だ』と言い出したアーティストもいたのですけど、うまい具合に手に入って、楽器のようなオブジェのようなものを作っていました。あれは竹がなかったらどうするつもりだったんだろう(笑)。そんな風に、お互いの状況を見て展覧会を“共有”しているので、作品の境界線を作り過ぎないように気をつけています。あと、パフォーマンスのスタートもハッキリさせないつもりです。日没と同じで、気づけば…ぐらいの感じがいいなと。その時間がグラデーションになるようにしたいですね。パフォーマンスの内容は決め過ぎず、観客を取り込むことも考えているので、日々対応していくものになりますね。2時間をゆっくりフワフワさせることで、観客にもじっくり楽しんでいただきたいです」

Adam Kitingan(アダム・キティンガン:美術家 コタキナバル/マレーシア)

photo by WinWin

記録・アーカイブ化までがアジアン・サウンズ・リサーチの活動なので、この機にペナン島で行われた初回の写真集も発売。またWEBでは作業内容を随時紹介しており、「サイト上でもライブ感を出していきたい」という。なお、会期中には大友も登場予定だ。 *トップ画像=Adam Kitingan、Sachiko M、米子匡司(音楽家)、水内義人(現代美術家)

photo by 渡部勇介 *画像はすべてAsian Sounds Research 公式ウェブサイトより http://www.soundsresearch.com/op-2016-what-happen アジアン・サウンズ・リサーチ(プロジェクト・ディレクター:Sachiko M) 「OPEN GATE 2016」 ◎10月6日(木)~10日(月・祝) 【公開時間】15:00~19:00 【パフォーマンス開始時間】日没前後(17:00頃) 岡崎シビコ 5日間パス1000円(期間中有効・ノベルティ付) ※公演期間中、岡崎シビコ現地にて発売。

あいちトリエンナーレ2016 ◎開催中~10月23日(日) 愛知芸術文化センター/名古屋市美術館/名古屋・豊橋・岡崎市内のまちなか/他 http://aichitriennale.jp/

bottom of page