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プロジェクションマッピングの先端技術を駆使したシェイクスピア劇


アマチンの愛称でも親しまれる劇座の天野鎮雄をはじめ、名古屋のダンサーやパフォーマー、ミュージシャンらが集結してシェイクスピア劇を上演する。その名もマッピングDEシェイクスピア「The Tempest」は、シェイクスピア最晩年の戯曲「テンペスト」の世界をプロジェクションマッピングや3D映像を駆使して出現させる壮大なプロジェクトだ。演出は、演劇のみならずオペラやコンサートなど多彩なステージを手掛けてきた齋藤敏明。主人公プロスペローを重鎮・天野が演じる一方、多方面で活躍中の道化師LONTOとChangが演劇初挑戦を果たすのも面白い。齋藤、LONTO、Changに企画の経緯や抱負を尋ねた。

齋藤「出演者でもある藤井奈緒美さんが、鳥居一平教授と愛知工業大学・明電高校の「TEAM AI」によるプロジェクションマッピングの世界有数の技術に惹かれ、芝居でご一緒できないかと考えたのが発端です。また藤井さんは、イギリスのロイヤル・シェイクスピア・カンパニーがプロジェクションマッピングを導入してシェイクスピア劇を発表したことやその成果にも感銘を受け、アマチンさんに相談して『テンペスト』の上演を決めたそうです。その後、僕に演出をという話が来て担うことにしました。これほど大掛かりな規模で映像を取り込んだ作品が見られるのは、名古屋では初めてじゃないかと」

ミラノ大公のプロスペローは弟やナポリ王の陰謀で失脚し、娘ミランダと島流しにされた。それから十数年が過ぎた頃、近くをナポリ王一行の船が通り掛かると知ったプロスペローは、魔法の力で嵐を起こし、彼らを難破させる——。幻想性も豊かなこの劇で重要な役割を担うのが、空気の妖精エアリエルと怪物キャリバン。これをLONTOとChangが演じる。

Chang「僕たちは道化師なのでセリフを言うのは初めてなんですよ。LONTOと二人でカンパニーを立ち上げた直後に話をいただき、何事かを始める流れのままお引き受けしました。自分たちで判断したり断る理由がないんだから、齋藤さんを信頼すればいいのかなと」
LONTO「サイレントにこだわってきたところはあるんですよね。年齢や性別がわからないほうが魅力的じゃないかと考えて20数年やってきたので、声を出す怖さはあります。齋藤さん、私の歌なんて聞いたことなかったでしょ?」
齋藤「だから賭けです(笑)。でも、そういう時ほど僕はうまくいく。妖精と化け物の役をと想定して依頼して、セリフを読んでもらった時、読み通りイケるんじゃないかなと感じました。LONTOの歌もいいんですよ。二人は大正解、目玉ですよ。彼らが他の演出家の舞台に立つ姿も見てきて、彼らの身体表現も含めパフォーミングアーツとして成立させられると考えています」

30人近いキャストの中には、歌やダンス、あるいはパーカッションといった分野の表現者も。総合的な舞台芸術になることは確かだ。

齋藤「プロジェクションマッピングは舞台美術の面や魔術の場面など様々に活かします。また歌を増やし、ラブロマンスのシーンはピュアに楽しんでいただきつつも、バカバカしさも楽しんでもらいたい(笑)。もちろん、プロスペローを軸とした物語はしっかり作っていきますよ」
LONTO「アマチンさんのオーラには、ハッとさせられますね。勉強することも多く、言葉を使って伝えることは本当に難しいなと。私は、人間ではないのに人間的なキャラクターになっていく役なので、映像に負けないよう存在したいです」
Chang「この公演はコロナで1年の延期を経ているんですが、その間にアマチンさんはじめいろんな方のワークショップが開催され、基礎を学べたのはラッキーでした。道化師25年目にしてシェイクスピアに出会った意味も感じています。挑戦、模索、再生……。新しい何かを積み、力にしたいと思います」
齋藤「『テンペスト』は〈融和〉がテーマのひとつになっていて、仕返しから許す感情へと変わっていきます。4年前の計画当初はトランプ政権下の分断について考えていたのに、今はコロナ下の分断を考える世界になってしまった。でも、分断ではなく互いに認め合い許容し、もう一度コミュニケートしていかなければと。多種多彩なジャンルがミックスされたエンタテインメント性豊かな舞台にしたいと思っています」

*トップ画像左からChang、LONTO、齋藤敏明 マッピングDEシェイクスピア
「The Tempest」
◎2021年10月22日(金)~24日(日)
名古屋市青少年文化センター アートピアホール
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