竹内涼真の初舞台、名古屋で公演中
竹内涼真が初舞台にして初主演に挑戦した「17 AGAIN」が名古屋の御園座で公演中だ。同作は2009年に公開された米コメディ映画のミュージカル化。日本で世界初演を迎えた希少な作品でもある。竹内は、30代半ばにして人生に悔いを覚え、家族とのコミュニケーションにも不満を抱える中、17歳に逆戻りしてしまう役どころ。もう一度、17歳という時間を体験するから「セブンティーン・アゲイン」というわけだが、心は35歳のままなのがまた面白い。
竹内演じる主人公マイクは、かつてハイスクールバスケットボールのスター選手だった。プロ入りも確実視されていた頃、ソニン演じる恋人スカーレットの妊娠が発覚。マイクは夢を捨て、彼女と結婚することに。やがて娘と息子に恵まれたものの、気づけば30代も半ば。仕事はうまくいかず、妻や子どもたちとの関係も最悪な状況だった。マイクは自分の人生の選択が間違っていたのではないかと煩悶し、ついには家を飛び出して親友ネッドのもとに身を寄せる。そこで突然の異変!? マイクは身体だけが17歳に戻ってしまう……!!
本当に17歳だった時から舞台は始まり、18年を経たマイクがお腹も出っ張った中年になっているところが、なんともリアルで苦笑い。夫婦や親子のコミュニケーションの問題、いじめや性の問題にも、国や時代を越えた普遍性を感じる。そこに軽快なポップスやしっとりとしたバラード調のミュージカル・ナンバーが挿入され、物語はぐんぐん進んでいく。またバスケットボールのシーンもふんだんで、ダンスとともに舞台に躍動感を与えていた。
竹内は「初」尽くしの中、運動神経や勘の良さを発揮。何より声が良く、歌もうまいのがイイ。舞台俳優として先輩に当たるソニンに刺激されながら稽古に励んだようだが、そんな両者の掛け合いはケンカもラブシーンも絶妙。特に、外見は17歳・中身は35歳のオトコが再び妻に恋し直すような流れには、年齢差もあいまって妙なドキドキ感があった。一方、親友役のエハラマサヒロや娘役の桜井日奈子らも恋愛絡みの騒動を起こしつつ、コミカルな演技でドラマを盛り上げている。
なお、翻訳・演出は谷賢一。2019年、福島県と原発の歴史を3部構成で描いた「福島三部作」で第64回岸田國士戯曲賞を受賞した谷は、その後も「人類史」「チョコレートドーナツ」「エブリ・ブリリアント・シング」などで評価を高めてきた。社会に鋭い眼差しを向けながら、人間の生理にも訴えかけるような手腕は、本作でも存分に発揮されている。
撮影:宮川舞子(舞台写真すべて)
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