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夥しい怪異の連続!? ヨーロッパ企画が新たなステージへ


ヨーロッパ企画の代表であり、同劇団の作・演出を一手に引き受ける上田誠は、その作風から理数系の脳を持つ人というイメージが強い。実際、怪奇現象や超常現象には懐疑的というのに、なぜか新作はオカルト青春コメディ。しかも題名は「ギョエー!旧校舎の77不思議」。ちまたにあふれる“七不思議”なんか目じゃないのだ。上田に着想の経緯を尋ねた。

「去年は創立20周年の節目で代表作『サマータイムマシン・ブルース』と続編『サマータイムマシン・ワンスモア』を発表して、象徴的な公演になったと感じていて。同時に、一回りしてもメンバーの劇団への温度に変わりがなく、それぞれの野望も出て来たり新しい人の加入もあって、21年目に次の一歩を踏み出せそうだなと。そこで今までやっていないこと、手を出していないことを考えたら、ホラーになったんです。前回は集大成のような面も大きかったので、ヨーロッパ企画の新たな歴史を拓くために、景気づけですね(笑)」

景気づけなのにホラー選択という感性には、早くもヤラれる。77もの怪異に見舞われるという“量を増やす手法”は傑作「Windows5000」にも通じ、いい予感しかしない。舞台は、ある高校の旧校舎。学校の怪談的オカルトが展開される中、ヨーロッパ企画の劇団員は主に教員を演じ、フレッシュな客演陣が生徒となって青春の空気を発散する。

「理科室や美術室など各教室に怪異は潜んでいがちですが、演劇らしく場所は固定にして、逆手にとった趣向で面白く見せることも考えています。ホラーを真正面からやるには舞台というものは遠いので、キャストが怖がっている様子を遠くから眺めて笑うような感じになるかも。ホラーでは、次々に人が死ぬとか非人間的な展開も当たり前で、ハッピーエンドが待っているというものでもない。恐怖を生むための“装置性”の高さみたいなものがホラーにはあって、僕はそこがソリッドで好きなんですよね。だから作者である僕は徹底して怪異や恐怖を与えるし、キャストは生き抜いて芝居を続けようとする。そのせめぎ合いを観ていただくことになると思います」

今回も上田のドライな手つきが冴え、緊張と緩和の連続に観客は笑い転げることとなるはず。ホラー映画、ましてやスプラッタ―映画など苦手という人にも恐れず観てほしいが、演劇ならではのリアリティや鳥肌の立つような演出も仕掛けていきたいという。

「だまし絵を題材にした『出てこようとしてるトロンプルイユ』では、不安から来る怖さを表現できたところがあったんですよね。ヨーロッパ企画はエログロなどもやりませんけど、直接的にそういうことをしなくても未踏の感覚は創造できるんじゃないかと思うんです」

なお、ホラーでは様々な音響や音楽、例えば音楽室から聴こえてくるピアノの旋律ひとつとっても重要になってくるが、本作では昨年からHARCO名義を改めた青木慶則が音楽を担当。上田いわく「エバーグリーンな楽曲を求めつつ、現代音楽とも言える果敢な曲も創作できて、二面性がある」青木は、意外な音楽でヨーロッパ流ホラーを彩っていくだろう。

左から中川晴樹、上田誠、永野宗典

ちなみに、今回のキャンペーンには中川晴樹と永野宗典も参加。旗揚げメンバーの永野は「みんながヨーロッパ企画の外でも活動することで、劇団に良い循環を生むというのは上田と同感。21年目は意識的に底上げしていきたいです」と情熱をのぞかせた。名古屋出身、劇団初期から共に歩んできた中川は「20年前と同じことなんてなくて、それぞれ家庭環境なども変わりました。今は、その変化を踏まえて続けていきたいと考えています」と語る。そんな二人の言葉を聞いた上田は「21年目にしてメンバーが先生側に立ち、若い子たちの青春を生かしてやろうとする物語は、ちょうど良かったのかな」と二コリ。

チケットは6月29日(土)前売開始。完売が予想されるので購入はお早めに!

ヨーロッパ企画 「ギョエー!旧校舎の77不思議」 ◎9月4日(水)14:00/19:00 名古屋市東文化小劇場 前売5000円 当日5500円 学生シート(前売のみ・引換時要学生証提示)3000円 ◆6月29日(土)前売開始 http://www.europe-kikaku.com/

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