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萩原聖人が死神に扮し、伊坂幸太郎の小説世界を生の舞台で濃密に…


人気小説家・伊坂幸太郎の「死神の精度」は、ひとりの死神を中心に6つの物語からなる短編集だ。その中の1編を鬼才・和田憲明が脚本化。同時に演出も手掛け、2009年に「死神の精度~7Days Judgement」のタイトルで舞台化した。同作が9年ぶりに再演決定、名古屋で初めて披露される。キャスト4人の濃密な劇に初演から引き続き登板するのは、やくざの藤田を演じるラサール石井のみ。再演では萩原聖人、植田圭輔、細見大輔は新たに参加する。特に萩原は、千葉と名乗る主人公の死神役とあって作品を左右する立場。緊張感高まる東京公演初日目前というタイミングで、萩原が抱負や率直な心境を語ってくれた。

「死神が登場するので、ファンタジーの要素が強い感じもしますが、“現実の中の虚構”というのか、虚構と現実がうまく融合している作品になっていると思います。死神は出ずっぱりで大変な役どころですが、台本がすごくシンプルにまとまったおかげで、演じやすくもあり、観やすくもあるんじゃないかと。また、原作の持つテイストと和田さんのハードボイルドな演出が、意外にも合っているんですよね。ファンタジーは当たり前のようにやってしまうと矛盾が生まれがちですけど、稽古を通じて、ある確信を持ってやれるようになりました」

リハーサル風景 左から植田圭輔、萩原聖人

萩原演じる死神は、やくざの藤田(ラサール)に死を与えるかどうか、7日間で判断しなければならない。〈生と死〉をめぐって対峙するふたりに、兄貴分の藤田を慕う阿久津(植田)、藤田と敵対する栗木(細見)も絡んでいく物語は、一見コワモテの世界観をイメージさせる。ところが、死神は音楽好きで、CDショップにも度々現れるというから面白い。

「役作りは苦労しましたし、今もまだしています。人間の姿をしているんですけど、人とは違う要素、違和感のようなものを出さなければいけない。それが本作のひとつのテーマにもなっていて、どうやるか次第で作品の説得力にもつながっていくんです」

〈死〉を司るキャラクターなので、同作から死生観について考えたことなど尋ねてみると、答えに少し戸惑い、それが彼の誠実さを示していた。

「僕自身は千葉の考え方に近いかもしれません。『人はいつか死ぬ』、それだけというか……。〈生と死〉のことを考え始めると、今ある存在をどうしたらいいのか、わからなくなる自分がいるんです。『人間というのは、とても愚かだ』という千葉のセリフがありますけど、どんなに努力しても、お金があっても、誰も死を避けることはできない。ただ、この作品では声高に〈生と死〉が叫ばれることはなく、日常の中に表現されていると思います」

ちなみに、萩原いわく死神の千葉は「チャーミング」なんだとか。それに比べると他の3人はカッコイイ存在らしく、中でも「ラサールさんがとにかくカッコイイ」と語った。このかっこよさは作品全体にも関わる。

「この作品には、舞台ならではのかっこよさが詰まっているんですよ。隠し事が一切ない中、ファンタジーをハードボイルドとして堂々とやっている感じがして。最近ではマッピングなど最新技術を使った演劇も多いですけど、ある意味『死神の精度』には小劇場演劇の原点が凝縮されていて、いわば王道じゃないでしょうか。観てもらえれば、演劇に足を運ぶ価値や、そこでしか感じられない生身の人間のエネルギーをわかっていただけるはず。舞台は好きなので年一回ペースではやっていますが、旅公演の機会は限られていて、名古屋に来るのも6年ぶりです。正直この『死神の精度』は本当におすすめしたい作品なので、生身の僕らを観に来てください」

「死神の精度~7Days Judgement」 ◎9月13日(木)14:00/19:00 名古屋市青少年文化センター アートピアホール 全席指定6800円 ※未就学児童は入場不可。 ※14時の回のみ終演後にアフタートークあり。 中京テレビ事業 公式サイト 「死神の精度」公式ツイッター

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