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渡山博崇が奄美大島と向き合ったらハワイがなぜかやってきた……!?


とある地方都市にハワイがやってきた。法律や文化だけでなく気候までもハワイになってしまった町では、人々もハワイアンになるしかなかった――。

ナンセンスだとかシュールな世界を通り越して、もはや「怖ぇよ!」と言うしかない群像劇「ハワイアン」が開幕する。劇作家・演出家の渡山博崇が、自ら主宰する星の女子さんに書き下ろしたこの新作は、本人いわく“サスペンスホラーコメディ”。渡山に話を聞いた。

「ハワイアンという言葉には“エイリアン”を引っ掛けていて、ゾンビ的に感染していくイメージを持たせています。突然やってきたハワイという概念に人々は感染され、町が支配されていくという……。振り返ればハワイも、農業プランテーションに代表されるアメリカの富によって支配され、政治的にも乗っ取られた歴史がありますよね。そして奄美大島も、薩摩によって支配された歴史がある。風景が変えられてしまったことへの共感から、今回これは書かなきゃいけないと思ったんです」

奄美大島は、渡山の故郷。渡山が初めて故郷と向き合うことにしたのは社会的、政治的な意図ではなく、もっと根源的なところへの想いに起因している。

「両親が奄美に帰ったこともあり、墓参りの機会があったんですけど、港の見える丘の墓地から景色を眺めた時、初めて『いいな』『ここに入るんだな、入りたいな』という気持ちが芽生えたんです。土着意識を感じたというのか、帰ってくるところはあるんだなと」

この物語は祖母・母・娘の三代記でもある。登場人物は作家自身や家族の分身とも言えるそうだが、渡山はただの自分語りをするつもりはない。「恥ずかしさを覚え、だんだん関心を持たなくなる“自分”というもの」に向き合いつつ、その状況をニヤニヤしながら俯瞰しているというのが渡山らしい。一方で「出発点は自分の身体」という発言に、これまでとはまた違った具体的で確かな強さを感じる。

稀有な存在感の火田詮子、くらっしゅのりおら名古屋のベテラン俳優も客演

“還るところ”を意識したがために、渡山は本作で自らの原点にさかのぼった。劇の舞台は、テーマパーク型温泉施設「ハワイアンセンター極楽」。憧れの楽園ハワイに侵略されたのが、いやはや、極楽町とは! “天国にいちばん近いところ”という謳い文句で結ばれた重層の町は、どんな風景となって現れるのか。なにやら怖いけれど、早く観たくて仕方がない。

星の女子さん 「ハワイアン」 ◎10月26日(木)~29日(日) ナビロフト 一般:前売2500円 当日2800円 学生:前売1800円 当日2000円 ※アフターイベントあり。詳細は公式サイト参照。 http://hoshinojoshisan.wixsite.com/hoshinojoshisan

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