劇作家協会東海支部とナビロフトが始めた、戯曲への新たなアプローチ
日本劇作家協会東海支部と劇場のナビロフトが新たなイベント「ナビイチリーディング」をスタートさせた。これはリーディングとディスカッションをセットにした、一種の戯曲ワークショップ。協会本部のある東京で2010年に始まった「月いちリーディング」が大阪、神奈川、北九州に広がり、東海支部でも開催を決定。2016年9月のプレ開催を経て、この7月から本格始動した。会場となるナビロフトとの共同主催ということでイベント名も独自に設け、可能な限り毎月最終月曜の夜に行うことで参加者の定着を図る。
7月に行われた第一回目は、東海支部事務局長で当企画の中心的役割を担う鹿目由紀(劇団あおきりみかん)のコーディネートのもと実施。まずは“今月の戯曲”に選ばれた鏡味富美子の短編「寒椿となわとび」を、おぐりまさこ(空宙空地)、鈴木亜由子(星の女子さん)、稲垣僚祐の3人がリーディングする。上演後は、車座のイメージで客席をなるべく丸くレイアウト変更してディスカッションが始まった。その際、カナメともなるファシリテーターは中内こもる(劇団中内(仮))が務め、スムーズに進行するよう発言内容を整理していく。また、ディスカッション・ゲストとして刈馬カオス(刈馬演劇設計社)も参加した。
リーディングの様子
ディスカッションには「リズラーマン方式」が採用され、段階をおって批評が積み重ねられていく。第1段階では、観客側からシンプルな感想や意見を発表。第2段階では作家が自ら気になっていた点などを観客に問い掛け、第3段階では観客から作家に疑問点や興味をもった点を尋ねる。鏡味からは「中編や長編に発展させられる可能性はあるだろうか」と自身の意欲を交えた質問が出る一方、ゲストの刈馬は鏡味の女性らしい感性を讃えつつ着想のきっかけなど尋ねる。そして最後の第4段階で双方が忌憚のない意見を述べ合ったのだが、作家が実体験を戯曲に反映させることへの葛藤や、創作活動と私生活の充足感のバランスといった“お悩み相談”(!?)も飛び出し、場内には笑いもあふれた。
ディスカッションの様子 左から中内こもる、鏡味富美子、刈馬カオス、鹿目由紀
当企画は戯曲のブラッシュアップを目的とし、劇作家の育成とともに発掘も目指している。そのためにもリズラーマン方式は、作家と観客の両者が考えをゆっくり落ち着いてまとめられるように感じた。一般参加者から活発な発言があったのも、そのおかげだろう。なお、今後は公募によって戯曲が選ばれる。若手の劇作家にとっては、一方的に批判批評を浴びるのではなく、冷静に意見交換できる場は貴重だ。観客にとっても、戯曲というちょっと難しそうな存在が身近になれば、演劇をより深く楽しめるはず。
次回10月の第三回目は初めて公募作品を対象とするので、支部員は準備に奔走中。また、第四回目の作品も募集中だ。詳細は公式サイト等を使って随時お知らせされるので要チェック。ナビイチリーディングで未知の逸材に出会える日は、そう遠くないかもしれません!
*写真はすべて2017年7月31日開催の第一回目
日本劇作家協会東海支部×ナビロフト ナビイチリーディング 第三回目 ◎10月30日(月)19:30~21:30 ナビロフト 参加費500円 ナビロフト特設サイト 日本劇作家協会東海支部公式サイト 日本劇作家協会公式サイト