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呆れるも愛しい“男子たち”の群像


「百円の恋」で第39回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した足立紳が、監督デビューを果たす。足立自身の書き下ろしによる映画「14の夜」は、14歳の中学生・大山タカシを主人公にした物語。時は1987年8月。タカシと部活仲間の多田ミツル、岡田サトシ、竹内剛は、町に1軒だけあるビデオレンタル店にAV女優・よくしまる今日子がやってくるというウワサを聞きつけ、夜の冒険へと飛び出す――。自身の思春期を投影した作品と認める足立に、思い出も含め話を聞いた。

「8年前には本作の台本に近いものを書いていたんですけど、映画化の機会がなくて、自主映画でいいから撮ろうと準備を進めていたら、『百円の恋』のプロデューサーでもあった佐藤現さんが『うちで製作しないか?』と声を掛けてくださったんです」

当初は思春期ド真ん中みたいな題名だったそうだが、製作サイドと話し合い、尾崎豊の名曲をもじって「14の夜」に正式決定。青春ド真ん中の雰囲気に!? キュウソネコカミによるオリジナル主題歌「わかってんだよ」もぴったり合っていて痛快だが、少年たちの性を描いた内容に変わりはなく、観るとバカバカしいような懐かしいような気持ちが去来する。

「僕が中学3年生の頃、この物語どおりの噂話があって、いつか映画にしたいと思っていたんです。当時の僕は、このまま性的体験をすることなく一生を終えるんじゃないかと、真剣に心配で(苦笑)。性にものすごく興味はあるし、触れたいんだけど、同時に怖いという感覚もあって、臆病だった僕は一線を越える勇気がなかった。だから、最後まで到達できないんじゃないかという不安感があったんです(苦笑)」

足立の化身とも言えるタカシを演じた犬飼直紀をはじめ、少年役は平成生まればかり。彼らには実際「そこまでオッパイを見たい理由がわからない」とも言われたそうだが、想像力を働かせながら熱演した少年たちの演技には愛しさがこみあげる。中でもタカシの疾走シーンは、監督の狙いどおりグッとくるものに! このシーンはクランクアップの日に撮影されており、「犬飼くんを最後、お父さんお母さんに返すのが嫌だった」という足立の言葉からも素敵な現場だったことがうかがえる。ただ、創作の発端には複雑な感情も……。

「書いた当時は全く仕事がなくて、どん底の状態。その鬱屈した感情が、少年時代に抱えていたものと重なったんですよね。また、その頃もがかなかったことへの悔いもあって、それを晴らしたい想いもありました。少年時代の自分に『吐き出さないとダメだよ』と言ってあげたいというのか。そうしないと、ああいう大人たちになっちゃうよと(苦笑)」

“ああいう大人たち”というのはタカシやミツルの父親を指している。タカシの父親は高校教師だが停職処分中、ミツルの父親は仕事もせずパチンコ通い。それぞれ事情はあるのだけれど、ある種、冷酷な眼差しを持った少年たちは酌量しない。結果、かえって子どもじみた振る舞いに走ってしまう父親ふたりもまた、大きい少年なのかもしれない。そんな愚かしくも切ない役どころを、光石研と坂田聡が妙演&怪演。また、夜の隙間に幻想の如く現れるガダルカナル・タカの存在感も圧巻。本作に奇妙な味わいを添えている。

なお、公開に先駆けて足立の書き下ろしによる小説「14の夜」が幻冬舎から発売された。出身地の鳥取県を舞台にした小説版は、足立少年の記憶がいっそうリアルに浮かび上がる。映画にはなかったエピソードも織り交ぜられているので、両方合わせてお楽しみを。

「14の夜」 ◎12月24日(土)~、シネマスコーレにて公開 http://14-noyoru.com/

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