園子温を撮った大島新監督が来名!
公開中のドキュメンタリー映画「園子音という生きもの」の監督・大島新が、名古屋シネマテークに登場!舞台挨拶を行った。映画界の鬼才とも異端とも呼ばれる表現者・園子温に密着した同作は、大島にとって「シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録」(2007年)以来の劇場公開作品だ。
「唐さんもそうでしたが、テレビ『情熱大陸』で取材したことをきっかけに映画としても撮影したくなって。テレビの場合、子どもからお年寄りまで幅広い層に受け入れられるよう制作することを求められますが、おふたりともテレビサイズに収まらない表現者。そこでドキュメンタリー映画だったら、もっとはみだした表現ができると考えたんです。ちょうど園さんが『ひそひそ星』を制作されるタイミングでもあり、新作はこのところ園さんが向き合っている福島の映画だともお聞きして、ますます撮りたくなりました」と大島。
映画監督が映画監督を撮ることの難しさを尋ねると「“監督だから”というよりも、“園子温だから”という難しさがありましたね」との答え。一体どんな苦労だったのだろう。
「つかみどころがないというのか、毎回、僕との距離感が変化するので、ロケの度に発見や違いがありましたね。穏やかで優しい方ではあるんですが、もちろんクレイジーな表現者でもある。そして、誰に対してもフラットに接する姿が印象的でした」
途中経過を見せたところ園が嫌がったりして(!?)、何かと気苦労の多い現場だっただけに、撮影が終わる時はホッとしたとの本音も漏らした大島監督。それでも「被写体が嫌がるぐらいでないと、表現としては力がないものになってしまう」という想いを貫き、結果、園も認める作品に仕上がった。中でも大島は、園の公私にわたるパートナー・神楽坂恵にインタビューした場面に思い入れがあるようだ。
「いちばんドキュメンタリーらしいと思うんですよ。神楽坂さんが女優と妻の間を行ったり来たりしていて……。ある才能の持ち主のパートナーになってしまった人の宿命なんでしょうけれど、彼女自身も特殊な感性を持ちあわせているんですよね」
サイン会で観客と交流する大島新監督
劇場に飾る色紙にもサインを
ドキュメンタリーを数多く手掛ける大島だが、映像との最初の出会いは亡き父である名匠・大島渚を通してだろう。園に興味をもった理由にも、父親の影響があることを隠さない。
「犯罪やセックスの表現にも過激に取り組み、時に政治的発言もいとわない姿勢は父と似ていて、以前から興味を持っていたのは確かです。ただ、映画への純粋性は園さんの方が高い気がします。父はロジカルで、言論人という顔が大きかったとも思うので。そこには大きな違いを感じますね」
ちなみに園も大島も、反発であれ敬愛であれ、父親との関係に複雑な部分があったことは共通している。「園子温という生きもの」を大島が撮ったのは必然だったのかもしれない。
「園子温という生きもの」 ◎名古屋シネマテークにて公開中 http://sonosion-ikimono.jp/