アートラボあいちが2カ所で再始動
あいちトリエンナーレ2016を来年にひかえ、情報発信やアーティストの支援、そして愛知県内の芸術系大学の連携事業のために活用される「アートラボあいち」が再始動した。あいちトリエンナーレ2010の翌年、長者町に開設された同施設は、あいちトリエンナーレ2013終了とともに閉館していたが、今年8月に以前の場所から移転して装いも新たにオープン。この機に愛知県庁大津橋分室の2・3階にも新設され、今後は「アートラボあいち長者町」「アートラボあいち大津橋」の2カ所から様々な企画や情報が提供される。
そこで再始動の第1弾として8月7日、芸術大学連携プロジェクト「Sky Over Ⅰ」が開幕した。これは愛知県立芸術大学、名古屋芸術大学、名古屋造形大学による合同展覧会。大学との連携による展示は、アートラボあいちの中心的なイベントになっていく。初日にはアートラボあいち大津橋においてオープニングセレモニーが催され、あいちトリエンナーレ実行委員会会長の大村秀章知事をはじめ、港千尋芸術監督、各大学学長ほか関係者が集まり、テープカットなどを行った。
「あいちトリエンナーレ2016は、いよいよ来年8月11日が開幕です。世界から注目され、多くの人に楽しんでいただけるよう準備を進めています。アートラボあいち大津橋が新設された愛知県庁大津橋分室は、昭和8(1933)年建築で、もとは金融機関の建物(=旧愛知県信用組合連合会会館)でした。この貴重な建築物を、大学連携と同時に、交流の場としても活用していきたいと思います」(大村知事)
「まずは今日、会場に到着したら、あいちトリエンナーレ2016のテーマカラーであるイエローオーカーのTシャツを着たスタッフに迎えられ、ひまわりが咲いているように感じました(笑)。今回その時代にしか造ることのできなかった建物で、若い作家たちが作品を発表するのは面白いことだと思います。また、街の中心地で発表できるのも新進作家にとっていいことですが、街にとっても広がりをもたらすんじゃないかと。交流、情報発信という点でもそうですが、例えば周辺に新しいお店やカフェなどがオープンするかもしれない。アートラボあいちは、長いスパンで見守っていただきたいですね」(港芸術監督)
セレモニー終了後は、大村知事が場内を視察。作家自身の話に耳を傾けながら、作品を鑑賞して回った。
大村知事に作品を説明する、天竺の楊珪宋さんと設楽陸さん
天竺(楊珪宋/設楽陸)《天竺大帝国太祖祭壇》2015年
《デフォルトな旅》という10分の映像を出品している小濱史雄さんに話を聞いてみた。名古屋芸術大学卒業、現在24歳の新進アーティスト。美術の世界には日本画から入って洋画に移り、今は映像での制作が中心だという。
大村知事に作品を説明する小濱史雄さん 小濱史雄《デフォルトな旅》2015年
「これは1986年1月28日に起きたチャレンジャー号爆発事故を題材にしていて、もしもチャレンジャー号が無事に飛んでいたら、どんな探査を行っていたんだろうと考えた作品です。ただ、この宇宙飛行士は画面に貼ってあるだけ。バックの宇宙も、Macの初期設定にあるものをそのまま流しているだけなんです。僕は、画面の中と外とか、オンライン/オフラインとか、インターネットと人の関係などに興味があるんですよね」
既存の映像と画面の前に貼りつけられた絵は、実は関係がないのに、関係が生まれて見えてしまう。「デジタルネイチャー世代」の小濱さんらしいユニークな作品だ。もちろん他にも絵画や彫刻など、意欲的な作品が多数並ぶ。大津橋・長者町をハシゴして観るべし!
山口貴子《Lost every day》2015年
山口貴子さんの作品を手にとって見る港芸術監督
芸術大学連携プロジェクト Sky Over Ⅰ ◎2015年8月7日(金)~9月27日(日) アートラボあいち大津橋<金・土・日・祝日開館> アートラボあいち長者町<木・金・土開館> 11:00~19:00 ※金曜は20:00まで
あいちトリエンナーレ2016 ◎2016年8月11日(木・祝)~10月23日(日) 愛知芸術文化センター/名古屋市美術館/名古屋市内のまちなか/豊橋市内/岡崎市内 http://aichitriennale.jp/