バレエ男子の青春ドキュメンタリー
世界中に優れた男性バレエダンサーはいるけれど、ジュニア世代では男子の存在はまだまだ少ない。圧倒的多数の女の子たちに交じってバレエに励む男の子の夢や心情は様々だ。そんな“バレエボーイズ”に迫ったドキュメンタリー映画が、北欧ノルウェーから登場。
首都オスロのオペラハウスを舞台に、3人の少年の4年間を撮り続けた「バレエボーイズ」。ただでさえ繊細な芸術家の卵たちなのに、人生でも最も多感な12歳から16歳という時期を追いかけた本作は、まさに成長&青春ドラマとなっている。
ルーカス、トルゲール、シーヴェルトは、プロのバレエダンサーを目指して切磋琢磨する仲良しの3人。彼らの目の前に迫る夢の第一歩は、オスロ国立芸術アカデミーに入学することだ。しかし、単純に夢を追いかけ、叶えられる世界でないのも現実。仮に入学できたとしても将来が保証されるわけではないだけに、支えてくれる家族や教師との話し合い、自身の能力を冷静に見つめる姿には、シビアなものを感じる。
一方、やっぱり10代の男の子らしい表情もふんだん。特にロッカールームでじゃれ合う様子などには「世界中どこへいっても、男子はまったく……」と、つい笑ってしまう。ただ、映画の終盤、分かれ道となる事態が起こり、3人は未来についてますます深刻に考えを巡らす。その先に見えてくる、彼らの決心とは……。
仕事柄、一般の人よりは多くのダンサーを見てきた。ダンサーはスポーツ選手と一緒で、身体が資本。怪我で思うように動けなくなった人、体力や精神の限界を感じて引退した人も多い。例えば老いさえ武器とする踊り手やジャンルもあるけれど、そういうのは本当に稀な話で、振付家や指導者になる人もホンの一握り。残酷な世界だ。それでもルーカス、トルゲール、シーヴェルトの3人は踊り続けることを選ぶ。これから世に出てくる可能性を十分に秘めた彼らと、劇場で出会える日が来ることを、心の底から願っている。
「バレエボーイズ」 ◎8月29日(土)~、名演小劇場にて公開 http://www.uplink.co.jp/balletboys/