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ゴキゲンな名曲の陰にあった真実


夏真っ盛りの8月、この季節の代名詞とも言えるグループ、ザ・ビーチ・ボーイズを題材にした映画が公開されている。中心的存在ブライアン・ウィルソンを主人公にした「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」は、ちょっと謎めいた展開にもドキドキしながら、ブライアンの知られざる真実に驚く伝記的作品だ。

「サーフィン・U.S.A.」「グッド・ヴァイブレーション」ほか夏や海を想わす名曲を数多く発表。世界中の音楽ファンの心を踊らせてきたザ・ビーチ・ボーイズだが、栄光の陰には当然、曲作りの苦悩やプレッシャーとの闘いも。繊細なブライアンはグループの中心人物として重圧を感じるが、弟や従兄弟、同級生という身近な仲間で結成されたグループのせいか、他のメンバーはどこか呑気。また、横暴な父親とも対立が深まり、ブライアンは孤立していく。やがて彼はドラッグに救いを求め……。

映画は、ザ・ビーチ・ボーイズ全盛の60年代とブライアン療養中の80年代を、行ったり来たりしながら展開。若き日のブライアンを「ルビー・スパークス」のポール・ダノ、神経を病んでからのブライアンを「ハイ・フィデリティ」のジョン・キューザックが演じ、二人一役でブライアンの人間像を作り上げている。また、80年代のブライアンと偶然に出会い、交流を深めていく女性メリンダにはエリザベス・バンクス。聡明な役どころの彼女は、ブライアンの治療に不可解なものを感じ、真相を突き止めようと奮闘する。そして、彼女の前に立ちはだかる医師ユージン役、ポール・ジアマッティの不気味さも圧巻。

ちょっと古めかしいけれど、ゴキゲンという言葉がぴったりのザ・ビーチ・ボーイズ。それだけに、立役者であった天才ブライアンの半生には複雑な想いを抱く。60年代の悩めるブライアンに世界がどう見えていたかを表現した果敢な映像からも、彼の苦しみや哀しみが伝わり、せつない。ただ、劇中で流れる楽曲はやっぱり心地よくてサイコ―。また、スタジオで見せる攻めの制作姿勢や、実際の音楽になっていく様子にも胸打たれる。「ラブ&マーシー」は、表現者の情熱、表現の根本に触れられる映画でもあるのだ。

「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」 ◎8月1日(土)~、センチュリーシネマにて公開 http://www.loveandmercy-movie.jp/

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