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スラプスティックな笑いがツボに!


アクション系が好きとか、恋愛モノをよく観るとか、映画のジャンルに好みがあるとしたら、この映画はアニメーション好きはもちろん、コメディを愛する人たちに絶対観てほしい。世界の映画賞を賑わした「ウォレスとグルミット」シリーズで名高い、英国のアードマン・アニメーションズ製作による「ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~」は、最後の最後までスラプスティックな笑いにあふれ、ハマりまくること必至だ。

そんなこと、EテレでTVシリーズをご覧の人からは「知ってるよ」とツッコミが入るだろうか。それでも、TVシリーズで7分・1話完結のものを約90分の劇場映画に仕立てるには、また違うアイデアが必要に。しかも「ひつじのショーン」はクレイ・アニメーションなので、粘土でできたキャラクターや背景をコマ撮りしなければならず、気の遠くなるような作業もあった。そう考えると、リチャード・スターザックとマーク・バートン両監督を筆頭とする制作チームの英知と情熱に、あらためて敬服してしまう。

物語には、主人公(主羊公?)のショーンをはじめ、おなじみの牧場主や牧羊犬のビッツァーが登場。さらには、セリフがない点までTVシリーズと同様だからスゴイ。セリフのない長編なんて…と思う人がいるかもしれないが、心配ご無用。というか、むしろセリフがないことで、複雑な感情がいっそう深く伝わってくるのだ。

舞台はイギリスの片田舎の牧場。ひつじのショーンと仲間たちは毎日のどかな生活を送っているが、マンネリの日々であることも事実。どんなに牧場主やビッツァーにいたずらを仕掛けてみたところで、大きな変化は訪れない。そんな時、都会行きのバスに休暇旅行の広告を見つけたショーンは、自分たちも休暇を取ろうと計画!? 牧場主を空いたトレーラーに眠らせ、しばしの解放感を味わおうとする。しかし、この他愛もない計画がトンデモナイ事態を招いて……!!

そこからは、もうジェットコースターのような展開。トレーラーは大暴走するわ、牧場主を探すためショーンたちは都会へ行くことになるわ、そこで動物収容センターの捕獲人の標的にされるわで、大騒動。ドキドキの連続で、どんどん引き込まれていく。

肝心の笑いは、全体的に湿っぽさ皆無。制作チームが苦労した「ショーンに眉毛がないため感情表現が難しい」という問題も逆手にとっている。ショーンたちが“無表情”な分、身体表現はより豊かに。おかげで、スターザック、バートン両監督の言うとおりバスター・キートンの映画に通じるところがあり、効果音の生かし方などにはジャック・タチの作品も参考にしていて、ドライでめちゃめちゃカッコイイのだ。逆に、ちょっと大仰な演技の捕獲人トランパーが鮮やかなコントラストを生んで◎。「こういう役者いるよな…」と思って観ると、風刺的にも映るからまた面白い。

言葉や表情による情報が最小限だからこそ、観る者の想像力や情感を刺激する傑作。観る年代ごとに異なる味わいがあり、“子どもから大人まで”の謳い文句はダテじゃない。なお、エンドロールまで遊び心たっぷりなので、すべてお見逃しのないように。

「ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~」 ◎7月4日(土)~、ミッドランドスクエア シネマほかにて公開 http://www.aardman-jp.com/shaun-movie/

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