top of page

おばあちゃん、カッコイイ!


ドキュメンタリー映画「アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生」を観れば、きっと、歳を重ねるのも悪くないと思うはず。NYを背景に、60代以上の女性7人を4年間にわたって撮り続けた本作は、ファッションを通じて個性とはライフスタイルとは何か、あるいは美学、哲学など様々なことを教えてくれる。

そもそも「アドバンスト・スタイル(Advanced Style=上級のスタイル)」とは、写真家であり、この映画のプロデューサーであるアリ・セス・コーエンが創設したファッション・ブログのタイトル。祖母たちと仲が良く、いろんな形で影響を受けたコーエンは2008年、祖母の勧めに従ってサンディエゴからNYに移住。すると今度は、街角で出会うシニア女性たちの強烈なファッション性に圧倒され、彼女たちを被写体に撮影&取材を始める。それらをUPしたブログが「アドバンスト・スタイル」というワケだ。

おしゃれは若い世代のものというような固定観念を打ち破るブログは、ファッション界をも巻き込んで話題を呼び、2012年には写真集へと発展。これは翌年、日本でも翻訳出版された。さらに今年の2月には東京でスナップ写真展まで開かれ、反響の輪を広げている。

映像化にあたっては、コーエン行きつけのコーヒーショップで知り合った(!)リナ・プライオプライトが監督。一流ブランドのキャンペーンやファッション誌のビデオを手掛ける彼女は、コーエンがブログを立ち上げる時から相談に乗り、逆にブログから刺激を受けて撮影を申し入れた。結果、プライオプライトの長編映画デビューも実現することに。

登場するのは、ジポラ・サラモン62歳、ジョイス・カルパティ80歳、リン・デル79歳、デブラ・ラポポート67歳、イロナ・ロイス・スミスキン93歳、ジャッキー・タジャー・ムルドック81歳、ゼルダ・カプラン95歳。人種も年齢も経歴も異なる7人は、色づかいのセンスや好みのスタイルなどファッションも色とりどりだ。また、オーバー60とは思えないほどボディラインも意識されていて、アートそのものが歩いているといっても過言じゃない。

もちろん中身、考え方もスマートなので、飾るのは外見だけでなく、発言のひとつひとつにも心憎い修飾を。それらは時に軽やかなユーモアにあふれ、時に人生の深遠を感じさせる。カッコイイんだけど自然体。このあたりはNYだからこそ、と強く思う。

全編、華やか&鮮やかな世界がスクリーンを埋め尽くすけれど、一方この映画は7人の過去や挫折、そして肉体的現実=老いにもきちんと目を向けている。そうすることで彼女たちの存在は一層くっきりと浮かび上がってくるのだ。

素敵な先輩方を見て、これから自分はどんな風に歳をとることができるだろうかと考えた。外見はともかく、せめて美意識であれ美学であれ美徳であれ、何かしら“美”というものを備えた人生を過ごしたいものである。

「アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生」 ◎5月30日(土)~、名演小劇場にて公開 http://advancedstyle-movie.com/

タグ:

bottom of page