いま最も気になる新鋭集団、room16が新作を発表
昨年の名古屋演劇杯をきかっけに出会い、筆者にとって近年いちばんの収穫となった新進気鋭集団、room16が新作「道化ボレロ」を発表する。脚本担当の八代将弥と演出担当の吉田光佑は「SABO」という共同名義で創作活動を展開。また、稽古を通じて役者の意見も汲み取り、演劇本来の集団創造を実現させている。旗揚げから5年目、千種文化小劇場での公演を機にさらなる飛躍が見込まれる今回、執筆中の八代に話を聞いた。
「“道化”というものを、僕らなりに定義して、提示してみようと思っています。主人公は、職業として道化になった女性。広い意味で、人を喜ばせる、楽しませる存在ですよね。ただ、その感覚が肥大していくとどうなるのか。例えば、おせっかいと感じて離れていく人も現れたりすることで、劇が動いていきます」
なお、題名にある「ボレロ」はバレエ音楽として有名な楽曲。会場が円形劇場ということもあって思いついた言葉らしい。かの曲がそのまま流れるかどうかは別として、「徐々にクレッシェンドになっていく曲のイメージと劇がリンクしていけば……」と八代。
前作「ラクダ」では、繊細な日常会話と巧みな演技で、恋する女性3人を三者三様に描き、生々しい人物像を浮かび上がらせた。さらに舌を巻いたのは、後半で雰囲気を一転させ、人間の狂気に迫ったこと。前半だけでも十分な会話劇を成立させていたのに、そこから大胆な演劇的冒険を犯す心意気には圧倒された。現代社会の表層を一枚めくったら現れる闇への眼差し。そんな視点は、今度の新作でも生きてくるのだろうか。
「明るくて弱音を吐かないような人が、信念を否定されたらどうなるのか、価値観はどうなってしまうのか。ポジティブな人間の中にもある闇を考えてはいるんですけど、自覚的なものとして描くかどうか……。これまでは人間のネガティブな、影の部分を描いてきて、ハッピーエンドもなかったんですよ。ただ、今回は迷ってます」
これは、room16初の大団円に!? しかし八代は「なにか、ぶち壊したくなる自分がいるんですよね(苦笑)」とも語っているだけに、劇の行方は最後までわからない。
room16「道化ボレロ」 ◎6月4日(木)~6日(土) 千種文化小劇場 一般:前売2500円 当日2800円 学生:1800円 ※要予約・当日学生証提示。 初めてペア割:4000円 ※要予約。 http://room16.jimdo.com/