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「忘れないと誓ったぼくがいた」   堀江慶監督&村上虹郎インタビュー


左から主演の村上虹郎、監督の堀江慶 河瀬直美監督「2つ目の窓」で映画初出演にして主演を果たし、同作でカンヌ国際映画祭も経験した村上虹郎が、「ベロニカは死ぬことにした」などで知られる監督・堀江慶の最新作「忘れないと誓ったぼくがいた」で2度目の映画主演に挑戦した。 平山瑞穂の同名小説を映画化した本作は、高校3年生の葉山タカシが体験する切ないファンタジー。彼は、ある日ふと目の前に現れた少女・織部あずさに恋をして何度もデートを重ねるが、そのうち彼女から驚くべき告白を受ける。彼女と会った人はすべて、数時間後には彼女を忘れてしまうのだと。タカシ同様、観客もにわかには信じがたい展開だが、映画は徐々に奇妙なリアリティを帯び、やがて涙の結末へと……。公開に先駆けて名古屋を訪れた堀江監督、村上に話を聞いた。 堀江「この作品は不条理で、ミステリーやサスペンスのような部分もある特殊なファンタジー。それをサラリと日常に入れていきたかったので、映画では『何でそうなったかわかりません』というところから始めていこうと。ファンタジーであると同時に、タカシとあずさ、ふたりの関係の話ではあるわけですし」 村上「小説という文章で表すのならばわかるけれど、映像ではどうだろう?という印象はあったので、とりあえず現場に行ってからだと思い撮影にのぞみました。葉山タカシは、どこにでもいそうな平凡な受験生。どんな人間にも短所長所ってあると思うんですけど、タカシは何もない、あるいは見えないんですよ。ただ、素朴で優しくていいヤツなので、自分としてはピュアにやるだけでしたし、演技としては引いていく作業が多かったと思います」 ちなみに、海外で生活してきたこともあり「実生活では制服を着た経験がない」という村上。俳優としての構えや言葉選びに独特の雰囲気があり、この3月で18歳になったばかりとは思えない存在感を放っていただけに、末恐ろしい逸材だ。父が俳優の村上淳、母が歌手のUAという生い立ちだけでは説明できない、彼だけの個性が光る。 村上「映画の『現場』が好きなんです。現場は辛いところですけど、自分で選んだ道で悩みがあるというのもいいじゃないですか。そういうことが、すごく幸せです」 堀江「リアクションが勝負の作品なので、あずさよりタカシの方が難しい。虹郎は、嘘がなく、素直で真っすぐな俳優だから、起用は正解だったなと。劇中、タカシが初めて記憶を失っていることに気づくシーンがあるんですけど、あの『忘れた』って顔が出た時、本当によかったと思ったし、そこから彼に全幅の信頼をおきました」 村上「監督の(自分に対する見方の)変化は知らなかったので、こうして取材で気持ちや考えが聞けるのは新鮮ですね」 一方、タカシの恋人あずさを演じるのは、早見あかり。最近ではNHK「マッサン」に出演するなど、今後ますますの活躍が期待されている。 堀江「彼女は悲観的にならないところがあって、この映画ではある意味ひどい目に遭うのに、どこか明るいんですよね。あずさという役には裏があってはダメなので、開けっぴろげでサバサバした早見は適役でした。あと、虹郎と似てるんですよ」 奇しくも村上と早見は、同じ誕生日、同じ血液型。年齢こそ違うが、通じ合うところは多かった様子だ。

村上「きょうだいといるみたいな感覚があって、どんな話をしたのか全然覚えてないんですよね。例えば、家族との会話をわざわざ覚えていないように……」 記憶にまつわる映画のエピソードで、話したことを覚えてないなんて言われると意味深に聞こえるが、そのあたりも含め自然体の村上と早見が現場にいたのだろう。 堀江「ふたりとも素直で自由。納得していない場合は顔に出すし、勝手でもあるんだけど(苦笑)、最終的にはこちらの要望に応えてくれるんです。ヘンにいい子が多い若い世代において、ちょっと違うものを持ったふたりですよね。だから、(奔放な)発言を聞いていても、本当にそう思ってるんだろうなと感じるし、逆に理解できないと、こっちがマズイんじゃないかと思わされてしまう」 そんな稀有なふたりが向き合った本作は、悲恋ではあるが、ラブストーリーであることも間違いない。苦さばかりでなく、青春の甘い味わいがあるのも、また事実。そしてそれは、観る年代ごとに違った後味となりそうだ。 堀江「若い子だけがキュンキュンするのではなく、上の世代でもいろいろ思い出す映画じゃないかと。それに、忘れるということや記憶の問題は、普遍的なテーマですから。謎のあるストーリーがラスト3分ですべてわかって、感動していただけたらいいですね」 村上「答えのない、想像力を掻き立てるラストシーンだと思います」 なお、ラストシーンは他の可能性も探った後に決まったそうだが、そのプロセスに関する堀江監督の言葉には映画人としての想いもにじみ、心に残った。 堀江「台本上にはあって、撮影も行ったラストシーンを、編集でカットしたんですよ。当初のままでは『現実だな』と感じてしまい、そうではない救いがほしかったので。何より、タカシが(あずさに)こだわっている時の衝動を撮らなければダメだと思ってましたし、その衝動で終わらせようと考えたんです。例えば、タカシがiPhoneであずさを撮るシーンがありますけど、その時のタカシは『この彼女の姿を残したい』と思っているわけですよね。その記録したい、残したいって衝動。それは『感情を記録する』とも言われたりする、映画そのものにも通じますよね」 ◎3月28日(土)~、109シネマズ名古屋にて公開

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