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劇団B級遊撃隊「朝顔」通し稽古に潜入!

名古屋を代表する劇作家・佃典彦が、自身の劇団B級遊撃隊で新作「朝顔」を発表する。創立メンバーにして名女房役の神谷尚吾が演出を手掛け、劇場としても利用する彼らのアトリエ「姫池052スタジオ」で上演されるが、今まで見知ったB級だと思って出掛けると驚くかもしれない。通し稽古で目撃した舞台は、佃自身が「新スタイル」と言うとおり、これまでと違った感触に……! まず、出演するのが佃と長嶋千恵、吉村公佑の3人だけという点からして、近年のB級にはめずらしい。佃演じる主人公が単身赴任先から帰宅すると、家財どころか妻も娘も見当たらず、部屋の真ん中に朝顔の蔓だけが茂っている。そこへ不動産仲介業者だと名乗る女がやってきて、あなたはこの部屋の住人ではないと主張するが……。 「不条理劇では典型的な『巻き込まれ型』の主人公ですよね」と佃。いや、典型的なのはそれだけじゃなく、構造そのものが不条理劇の典型で、王道中の王道。シンプルにしてしっかりした骨格の、いわば「ザ・不条理劇」なのだ。したがって不条理劇を追求してきた佃の真骨頂と言えるのだが、では、なぜ感触が違うのか。大きな理由はナレーションにある。 「劇団と外部公演含め100本近く戯曲を書いてきて、『今までやったことのない形式は…』と考えた時、一人称で語るものはなかったなぁと思って。それで小説みたいに書いてみたんです。それは例えば、醤油とみりんで作ってた料理に、今日はケチャップを使ってみたぐらいのことかな。だから自分でも『ああ、そうなるのね。不味くはない』ぐらいの感じなんですよ」と佃。 謙遜気味に語る佃だが、膨大なナレーションの入る同作を書き終えて「この形式で、また何かできそうな手応えはある」と思っているのもホント。例えに乗っかって表現するならば、だしと塩だけで勝負したような味わいの「朝顔」は、佃のレパートリーの新定番ともなりそうだ。

朝顔稽古写真2.JPG

左から佃典彦、吉村公佑、神谷尚吾 さて、そうなると演出にも新たな趣向が要求される。しかし神谷は「これまでの(佃の)戯曲と差異は感じてるけど、あまり考えすぎちゃいけないとも思ってる」と言うとおり、的確な演技をベースに劇を成立させるべく指示を飛ばしていた。役者の発声や身体で戯曲を彩ることこそ、神谷演出の真骨頂だろう。一方で、映像を使った新しい試みも。 「ナレーションを入れるのに対して、何か『気配』も出したいなと。そこで、いろんなパターンの映像を挿入することにしたんです」 これには作者の佃も予想外だったそうだが、このあたりは劇作家と演出家が異なる劇団の利点。互いの相乗効果で劇団のスタイルやカラーが更新されていくことは、結果、観客にとっても嬉しいサプライズにつながるはずだ。 なお、この「朝顔」は香港公演も予定されている。B級の本道でありシンプルを極めた舞台が、海外でどう受け止められるのか。朗報を心待ちにしつつ、まずは初日の幕が上がるのを楽しみにしたい。 ◎11月22日(土)~24日(月)・28日(金)~30日(日) 姫池052スタジオ【名古屋市千種区姫池通1-22】 2500円 ユース(25歳以下・要証明書)1500円

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