映画「100歳の華麗なる冒険」に衝撃
スウェーデン映画「100歳の華麗なる冒険」には思いっきりヤラれてしまった。老人を主人公にした作品というぐらいしか予備知識のなまま試写に飛び込んだので、観る前は「いくつになっても人生は輝かしい」というような、穏やかで温かなストーリーを予想していた。ところが!
おじいちゃんのアランは100歳の誕生日に老人ホームから抜け出し、バス・ステーションに向かった。行き先はどこでもいい様子。駅員から適当に切符を買ったアランは、直後、ガラの悪い青年に頼まれごとを押し付けられる。そこへバスが到着して……。
物語は、アランの無目的な(?)旅と彼の人生の回想が交差しながら展開。旅の途中のドタバタ騒動もさることながら、彼の人生そのものが刺激的&衝撃的だ。子どもの頃に独学で爆破技術を習得し、爆破行為に魅了されるまま爆弾の専門家になっていったアランは、その腕が買われて戦地で活躍。スターリンやゴルバチョフ、レーガンら大物政治家とも接近していく。
日本に関わる出来事も描かれていて、ある意味デリケートな問題もはらんでいるのだが、不思議と気分は悪くない。アランの達観した世界の見方が徹底していて、歴史上の大事件もウォッカを飲むことも、親が死ぬことも友と出会うことも、何もかもが等価のものとして映るからだ。アランは何事にも一喜一憂せず、目の前で起きることにただ向き合い、思うまま、やりたいように生きている。
アランのよき相棒となる老人ユーリウスや、気弱な青年ベニー、肝っ玉の据わった女性グニラなど、他の登場人物も愛おしいキャラクターばかり。彼らの常に真剣な振る舞いは、どんな酷い状況にも笑いを添える。また、随所に出てくる爆発シーンの見事なこと! こんなに痛快にして、示唆にも富んだ映画には久々に出会う想いだ。
日本ではまだまだ馴染みの薄いスウェーデン映画。監督のフェリックス・ハーングレン、そして、特殊メイクで青年時代から100歳までを演じきった主演のロバート・グスタフソンという才能をしっかり覚えておきたい。
◎11月8日(土)~、ミッドランドスクエアシネマほかにて公開