「こどもしょくどう」は現代日本の誰にとっても無関係じゃない!

March 19, 2019

 

日向寺太郎監督の最新作「こどもしょくどう」は、昨今かなり周知された〈子ども食堂〉を題材にしているが、ドキュメンタリー映画ではない。家庭の事情などで安定した食事を取れない子たちの拠り所として生まれ、いまや地域コミュニティの交流所ともなってきた〈子ども食堂〉は、核家族化や貧困問題のドキュメンタリーとして報道されることが多い。しかし本作は劇映画であることによって、特定の人ではなく、誰もが関わり得る現代日本の問題として〈子ども食堂〉を浮かび上がらせている。日向寺監督に経緯から尋ねた。
 

「僕は1本撮り終えるといつもプロデューサーの鈴木ワタルさんに次回作の相談や提案をするんですけど、鈴木さんの方から〈子ども食堂〉を映画にしないかという話をいただいて。マスコミでは報じられていましたが、今ほど知られていなかった当時のこと。最初はドキュメンタリーを撮ると早合点していたら、鈴木さんが僕の誤解を察して(苦笑)、ドラマ、劇映画にしたいんだと。それで脚本を誰にお願いするか話し合い、取材も始めました」
 

脚本家は足立紳に決定。日向寺は彼の代表作「百円の恋」の台本を読んで「みっともないところ、だらしないところ、弱さもひっくるめて人間を書ける人。善も悪も同居している人間という存在を描ける脚本家」と感じ、依頼した。ところが、足立は売れっ子だけに多忙を極め、途中から足立の愛弟子・山口智之が助っ人に加わるも、脚本に2年を費やした。
 

「〈子ども食堂〉をモチーフにすると決まっても、物語は無数にあるので時間が掛かりました。それでも足立さんとの間で、『子ども目線』と『〈子ども食堂〉ができるまでの物語』という2点はすぐに決まりました」
 

主人公は少年ユウトと少女ミチル。ユウトの両親である高野作郎と佳子は大衆食堂を営んでおり、ユウトの同級生タカシの家庭環境を心配して夕飯の面倒をみてきたが、ユウト自身は内心、いじめられっ子であるタカシとの距離感をはかりかねていた。そんなおりユウトはミチルと遭遇。父親と妹の3人で車上生活を送る彼女の悲惨な姿を目の当たりにして、徐々に行動を起こしていく……。ユウト役の藤本哉汰、ミチル役の鈴木梨央がW主演。ユウトの両親役には吉岡秀隆、常盤貴子が配され、役さながらに子どもたちを支える。
 

(C)2018「こどもしょくどう」製作委員会

 

(C)2018「こどもしょくどう」製作委員会

 

(C)2018「こどもしょくどう」製作委員会


 

「子ども目線で進んでいくだけに、中心となる子役5人はほぼ出ずっぱりで、彼らをいかに生き生きと撮れるかが重要でした。『火垂るの墓』を撮った時、演技を重ねる度に子役の良さが消えていくと感じた経験もあり、今回は撮影前のリハーサルを行わないことにして、それぞれの子が持っている魅力を失わないよう心掛けました。デジタル撮影の利点で、何度か失敗しても構わないという気持ちですよね。ただ、撮影に入ってみると1テイク目でOKということもたくさんありましたね。子役には〈子ども食堂〉のことをほとんど説明していないんですが、すべてわからないなんてことはないだろうと考えていて。台本を読んだり、シチュエーションがわかれば、感情として理解できるところはあるはずですから」
 

子どもたちの自然体にして体当たりの演技は、本当に観る者の心を揺さぶる。そして私たちが激しく動揺するもうひとつの理由は、この物語が決して他人事ではないという不気味な現実感ではないか。ミチルと妹ヒカルを残して失踪した両親がリアリティの立役者だ。
 

「脚本上いちばん最後まで悩んだのがミチルたちの家族像でした。実は映画にないシーンもいろいろ書いたんですが、具体的に書くほど『こういうお父さん、お母さん』というように見えてしまいます。でも特別な家族に映っては困る。彼らは『明日の私たち』あるいは『隣人』かもしれないんです。それと、これまでは貧困が貧困を生むと考えられてきましたが、今や、あるレベルの生活をしていた人が一転することもある。セーフティネットのない社会、それが現在の日本ですよね。ミチルたちは象徴的な家族なんです」
 

なお、ミチルの両親を演じるのはDragon Ashの降谷建志と石田ひかり。ふたりは偶然にも子どもたちを巡る社会問題への関心が高く、ほとんど台詞のない役で本作に参加。製作陣の狙いが見事はまり、シンボリックな存在感で物語に陰影を与えている。
 

(C)2018「こどもしょくどう」製作委員会

 

(C)2018「こどもしょくどう」製作委員会


 

撮影前、東京都大田区にある〈子ども食堂〉を取材した監督は「本物の〈子ども食堂〉は特別な場所ではなく和やかだった」と印象を語る。同時に「外見からはわからない場でもある」と――。〈子ども食堂〉のことを知る人も知らない人も、映画「こどもしょくどう」を観て、渦中からの視点で真実に触れてほしい。

 
「こどもしょくどう」
◎3月23日(土)~、名演小劇場にて公開

https://kodomoshokudo.pal-ep.com/

 

 

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