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花嫁が、祖母とバージンロード!?


バージンロードは花嫁が父親に手を引かれて歩くのが一般的だが、この映画では孫娘が祖母と一緒に歩くことを決意する。そこで題名も「ばぁちゃんロード」。主人公・夏海にとって、共働きの両親に代わり自分を育ててくれた“ばぁちゃん”は親同然なのだ。ただ、祖母・キヨは骨折をきっかけに施設暮らし。家族さえ拒絶するようになっていて……。夏海は、ばぁちゃんとバージンロードを歩けるのか。親子三代の関係、結婚する男女の関係を通じて、家族とは何かを問う本作。監督の篠原哲雄、夏海を演じる文音に話を聞いた。

篠原「最初は、祖母と孫のやり取りやリハビリを通じての展開に興味を持ったんですけど、どうやって深めていくか問題でした。そこで、距離の回復を描こうと。老いを家族に見せたくないという感覚はわからなくないので、リハビリまでの経過を大事件にせず、理解できるものにしようと考えました。それから、結婚式の映画にはしたくなかったんですけど、結婚が若い人にとってどういうものなのかは示したかった。そういったことを脚本家とかなり話し合いましたね」

本作は上村奈帆のプロットが元になっている。映画美学校プロットコンペティション2016で最優秀賞を受賞した彼女は、今年30歳を迎える新進の脚本家。篠原からすると二回りほど年下に当たり、ちょっと面白い手合わせとなっている。

文音「最初のプロットは2ページほどでしたが、これから結婚する女性の感情、絆の物語を面白く読ませていただきました。その後、監督と話し合いを重ねて生まれた台本には、シンプルで優しい作品になった印象を受けましたね。私が演じる夏海は明るい女の子ですけど、決めたことには真っ直ぐ突き進む性格でもあり、台風みたいに周囲を巻き込んでいきます。一人っ子らしい甘え上手なところもあって、それが計算ではなく自然なんです」

対して、ばぁちゃんことキヨ役は草笛光子。W主演となる草笛は芸歴70年に近く、代表作・受賞歴も数知れず。日本が誇る大女優だ。今回は車椅子生活の役どころで動きが制限される中、ちょっとした表情や仕草で表す心模様が圧巻。

文音「普段の草笛さんは、ばぁちゃんほどフランクではないですけど(笑)、仲良くさせていただいてます。親交があるからこそできた演技もあったと思いますし、監督から『その場で生まれることを大切に』という指示があったので、あえて作らず出てきた感情を生かしながら、ともかく草笛さんについていった感覚です。現場での草笛さんは女優であることを貫いていらして、かっこよくもあり、でも可愛くもあり、もちろん尊敬できるところもいっぱいありました。また、きらびやかな世界で生きてきた方なので、ごく普通のお婆ちゃんを演じるため模索していらしたように思います。そういう姿勢も勉強になりました」

祖母と孫娘の物語の一方で、もうひとつ大事になるのが若き恋人たちの物語。文音と結婚する漁師の荒井大和は、映画にテレビに舞台にと、多忙さを増す三浦貴大が演じている。

篠原「三浦くんとは『種まく旅人 くにうみの郷』以来2本目の映画ですけど、何でも受け入れるイメージで、僕はやりやすい俳優。夏海との喧嘩や仲直りのシーンが本当に自然でいいんですよ。三浦くんはどこか現代に侵されていなくて、土着的な魅力もあり、万能だからどんな役でも演じられる。漁師さんたちに交じっている時、見つけられなくなるほど溶け込むんですから(笑)。ご両親(三浦友和・山口百恵夫妻)の影響は言わないですけど、今回は草笛さんとの共演にまつわるエピソードが。草笛さんは『赤い衝撃』で百恵さんの母親を演じたことがあって、今回その息子さんが孫になる役ということで感慨深かったそうなんです。三浦くんは当時まだ生まれていなかったのに『お世話になっております』と茶目っ気たっぷりに返したりして(笑)。面白いご縁があるものですね」

なお、ロケは氷見市を中心とした富山県内で行われ、美しい自然の数々が作品全体を彩る。このロケ地とも様々なご縁があり、心に残る撮影となった様子だ。

篠原「この作品にとって病院の役割は重要で、もともと文音さんとご縁があった中村記念病院には業務外のことまでご協力いただきました。氷見は最近よく撮影に使われるんですけど、全面的な支援態勢が助かりますね。演出部と制作部の宿舎には氷見キネマという映画館の2階・3階を開放してくださったので、短期間で結束が高まりました」 文音「高岡市のニチイ学館では本物の介護師の方々に実際の作業を教わり、カメラも回したんですが、みなさん嫌な顔ひとつせず、ありがたかったです。富山は空、特に夕景が本当にきれいで、芝居も助けられた気がします。撮影がない日はみんなでバーベキューをするほど家族のように……、しかも全員ですよ! いい環境に恵まれて感謝しています」

「ばぁちゃんロード」 ◎4月14日(土)~、名演小劇場にて公開 http://baachan-road.com/

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