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北村想×高橋恵――師弟タッグによる異色の一編が名古屋上陸


昨年10月に名古屋初登場を果たした虚空旅団が、早くも2度目の来名を実現。しかも劇団代表の高橋恵にとっては師匠にあたる、北村想の書き下ろしを上演する。この新作「アトリエのある背中」は、高橋のイメージとも北村のイメージとも少し違う、艶っぽい舞台になる気配。演出を手掛けた高橋はもちろん、作者・北村にも話を聞いた。

高橋「想さんが始めた伊丹想流私塾の師範の任期を昨年の春に終え、気づけば8年も務めさせていただきました、その労いの意味だと思うんですけど、想さんが戯曲をプレゼントしてくださったんです。ただ、大事に上演したいので、どういう形が良いか考えているうちに3年ほど経ってしまって。いちばん苦労したのは、イメージに合うキャスト探し。それがやっと適って、昨年12月に大阪の八尾市文化会館プリズムホールで初演しました」

プリズムホールは400席近いホールだったこともあり、公演後じきに名古屋・ナビロフトでの上演を決めたという高橋。北村の言葉の輝きを伝えるのに、声の響きは重要だろう。北村も「プロセニアム式の劇場じゃない、ナビロフトの方が合う作品。舞台と客席の間に心地よい緊張感があり、会話劇としてのインパクトも変わってきますから」と続けた。

この空間が時に、アトリエから喫茶店や屋外へと変化するのも見どころ

中心となる登場人物は、画家の町田東麓と女優の日向早苗。さほど売れていないふたりは、画家とアルバイトのモデルという関係にある。そして町田のもとには謎の女友達が訪ねて来て……、というミステリアスな展開は北村作品らしい感触。しかし町田が早苗の背中ばかり描いているのは、もっと奇妙で気になる。勝手に裸の背中を想像しているが、さて!?

高橋「完全に裸ということはありませんけど(笑)、確かに大人のミステリーですね。町田には特別なガールフレンドがいる様子なのに、どんな人どころか、実在するのかも怪しい。町田も早苗も、町田の家族や画商も、必ずしも本当のことを言わないし、黙っていることもある。誰の言っている、どの部分が正しいのか?仮説を立てながら観る楽しさがあると思います。また、アトリエがセミパブリックな空間であること、あるいは会話する時間帯が、登場人物たちの発言に影響するのも面白いところ」

北村「背中に謎があるのは、最初そこから書き始めたせいですね。一種の伏線。高橋だったらどういうものがいいか考え、いわば演出家・高橋恵に当て書きした戯曲です。『こういうこともやれるんじゃないの?』と。逆に、自分では演出できないと思っているんですよ。この作品は女性演出家の方がいい。大阪公演を観たら、キャストも当て書きしたみたいにハマっていて、フランス映画のようでもあります。チラシのビジュアルにも納得ですね」

高橋「読んだ時から、ヨーロッパの映画みたいな印象はあったんです。スタッフもそういうイメージを提案してくれて、ちょっと“よそいき”の芝居になったかなと(笑)。ずっと虚空旅団を観てくださっているお客様には意外性がありつつ、でも突飛ではないんですよ」

なお、町田役は劇団ジャブジャブサーキットの作品でもおなじみのはしぐちしん(コンブリ団)、早苗役には高橋映美子。ふたりを軸に、高い演技力を誇る関西の役者5人が競演する。

前回は、ナビロフトと伊丹想流私塾の交流企画「Visitors」に参加して初登場。今回も同イベントの特別公演に位置づけられている。関西の優れた演劇が続々やってきたことで、当地の演劇人、そして演劇ファンは大いに刺激を受けた。同時に、高橋たちも収穫を得た。

高橋「来る前は不安もありましたが、名古屋のお客様は集中して観てくださったし、反応も良かった。正直、居心地は良かったです(笑)。千秋楽では長い拍手をいただいたので、もう一度カーテンコールに応えるべきだったんですけど、本当にそういうことなのか判断に迷ってしまって、あとでキャストに怒られました(苦笑)」

今度の名古屋でも、きっと熱いカーテンコールが起きるに違いない。

*舞台写真は2017年12月、大阪公演より

虚空旅団「アトリエのある背中」 ◎4月28日(土)・29日(日) ナビロフト 前売2500円 当日2800円 18歳以下2000円(要証明書) 虚空旅団公式サイト ナビロフト公式サイト

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