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親子愛&広島愛が炸裂!?


「南極料理人」「横道世之介」の沖田修一による監督最新作「モヒカン故郷に帰る」は、男の、男の子の映画だ。松田龍平と柄本明が息子と父親役として共演する同作では、いつまでも子どものような心を持つふたりを中心に、男たちの面倒な美学とナンだか愛しい生態が浮かび上がる。

主人公の永吉(松田)は東京でデスメタル系バンドのボーカルを務めているが、その音楽性とは裏腹に仲間との衝突を嫌い、当たり障りのない発言でやり過ごしては活動を続けている。そんな永吉が、同棲している恋人・由佳(前田敦子)の妊娠を機に結婚を決意。報告のため瀬戸内海に浮かぶ戸鼻島へと帰郷する。母の春子(もたいまさこ)は冷静に対応しようとするが、父の治(柄本)は永吉のシャキッとしない振るまいに激怒。そうかと思えば、急に祝宴を開いたり、奔放さを発揮する。ところが、そんな治に病の影が忍び寄り……。

治がガンだとわかった永吉は、由佳と島に残って親の面倒を看ようとするが、素直に心配や愛情を表現できない。一方の治も、昔気質ゆえ素直に甘えられない。そこに永吉の弟で、何かと理由をつけては実家に帰ってきてしまう軟弱な浩二(千葉雅大)も絡み、「まったく、この親子は……」と苦笑いさせられてしまう。

治、永吉、浩二の不器用さに対して、姑と嫁の関係にある春子と由佳は、たちまち距離を縮めて本当の母と娘のようになっていく。この男女の対比も鮮やか。「まったく、男は……」と、またも苦笑いさせられる。さらに面白いのは、治が指導している中学校のブラスバンドの少年・野呂の存在。女子ばかりのブラスバンドで唯一の男子としてトランペットに励んでいる野呂は、治から何かと愛のムチを受ける。それに彼はグズグズと応対するのだが、ある時、野呂くんの言葉が永吉の心に変化をうながすのだ。この野呂役は、「十字架」でも難しい役柄を務めた小柴亮太が好演している。

何より全編を通じて素敵なのは、治と永吉、あるいは野呂くんも含め、彼らオトコたちをつないでいるのが音楽であるところだ。治はブラスバンドの指導もしているが、最も愛するのは広島が生んだビッグスター、矢沢永吉!だから、息子の名前も永吉なんである。そして息子もまた、芽が出ないながらもバンドマンとして音楽に情熱を注いでいる……。ちなみに、治&春子夫妻の間には広島東洋カープという熱い絆も。中日ドラゴンズのお膝元にいる筆者としては複雑な部分もあるが(苦笑)、地元と野球を愛する気持ちには大共感!

逝く者があれば、産まれてくる者もあり、人間は生と死の大きな循環の中に存在する。それを、どう受け止めていくか。誰もが経験することなのに、誰もが戸惑う人生の節目に対して、この映画は「自然に、自然に…」と優しく背中を押してくれるような気がした。

「モヒカン故郷に帰る」 ◎2016年4月9日(土)~、センチュリーシネマほかにて公開 http://mohican-movie.jp/

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