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子どもたちよ!ダンスもいろいろだ


コンテンポラリーダンス界の雄、近藤良平の率いるコンドルズが各地の子どもたちを巻き込みながら日本縦断を敢行する!「GIGANT~ギガント~」は2014年に発表して好評を得た作品で、名古屋では初披露。今回さらに練り上げて上演するにあたり、近藤に話を聞いた。

「コンドルズでは再演をあまりしないんですよ。ただ、この作品は博多ほか地方公演も含めて面白くできたので、2016年バージョンにして全国ツアーを行うことに。子どもも大人も一切合切楽しんでいただけるよう、特に子どもに目を向けてもらえるよう、『ガリバー旅行記』を題材に選んでいます。2016年バージョンでも大筋は変わりませんが、コントには今年の時世を反映させますね。他にも映像や、どうにもこうにも不条理な人形劇(笑)なども入るので、今までどおりのコンドルズも観ていただけますよ」

ジョナサン・スウィフトの小説「ガリバー旅行記」は、主人公ガリバーが様々な国を旅するロマンと風刺に満ちた物語だ。題名の「ギガント」はギリシャ神話の“巨人族”に由来し、「〈小さい/大きい〉がキーワードになる」と近藤は言う。

「影を使ったりしますよ。あと、初演の頃は“浮遊感”に興味を持っていたんですよね。日常と非日常の向こう側って面白くないですか? 子どもたちには『何が起きるんだろう』と思いながら楽しんでもらいたいし、劇場ならではの体験を得てほしいですね」

劇場体験の最たるものとしては、子どもたちがステージに上がるチャンスまで! 公演地で募った小学生がオープニングアクトを務めるのだ。

「なんとか劇場に来てもらって、面白さを感じてほしいんですよ。そのために事前のワークショップで20分ぐらいの作品を作り、僕らの前座でやってもらおうと。ちょっと無理があってもやってもらいます(笑)。ワークショップだけでもいいんだけど、発表すること、人に見せることが大事だと思うんですよね。まず責任感を持ちますから。そうして、受け身ばかりではない場を提供したい。あと、ダンスをやるとなると、ヒップホップだとかジャズダンスだとかジャンル的になりがちですけど、コンドルズは何でもありの集団です。だから子どもたちにも、そういう精神を持ってもらえたら……。不思議な踊りやパフォーマンスをすることで、プチ・プチ・プチ・コンドルズぐらいにはなってほしいですね(笑)」

ダンスの型や技術を教えるのではなく、表現するとはどういうことか共に考え、その精神を分かち合う。例え子どもであれ、本気で向き合うのが近藤のカッコイイところだ。かつて市民参加という形で近藤のステージに立ち、その後、自らダンスカンパニーを立ち上げた少年がいることを筆者は知っている。近藤はいつも背中で何かを示してきた。それはコンドルズのメンバーに対しても同じなのかもしれない。今年は実に結成20周年の節目――。

「6人で始めて、現在は16人になりましたが、オリジナルメンバーは全員残っています。最初からユルいメンバーだったので、ここまで続いてきたんでしょうね(笑)」

近藤は冗談交じりに言うけれど、彼に絶大な求心力があることは間違いない。20代から50代までのメンバーを束ねるには苦労もあろうが「集団の在り方が問われる時代だからこそ、こういう状況でやれていることに誇りを感じる。自分自身も誇りたいが、仲間あってのことであり、そこには家族も含まれるかもしれない」と語り、周囲への感謝を忘れない。

コンドルズのメンバーはもちろん、コンテンポラリーダンス界そのものにも多大な影響を与えてきた近藤。自分たちやシーンの状況に対しては、こんな冷静な意見も……。

「コンドルズはダンスのテクニックだけじゃなく、ネタというのか、ステージの構成全体で勝負してきたんですよ。メンバーには太ったヤツもいて、身体的特徴がリスクではあるんだけど、それを敢えて題材にもしてきました。ただ、海外公演の経験が増えると、考えが揺らぎますよね。万国共通の反応もありますけど、例えば南アフリカでは、ものすごく太っている女性が普通に激しく踊ったりするので……。あらためてコンドルズのメンバーには、ちゃんと踊れ、バレエをやれって思ったりしますね(笑)。コンテンポラリーダンスの世界は『誰でも踊っていい』というスタンスで人口が増えましたが、半面、つまらない作品も増えた。『もうちょっと身体を鍛えろよ!』と思うことも多いですよ(苦笑)。そういうことを含め、シーンの現在があると認識しています」

近年は盆踊りの創作にも精力的で、社会における身体やダンスの在り様を新たに模索している。また、9月には20周年記念として東京・NHKホールでの大規模公演が控え、快進撃は止まらない。ただ、それもこれも近藤に言わせれば「祝い事はいっぱいあった方がいい」「いろんなイベントを仕掛けた方が楽しい」「出会いの多い活動が好き」という考えを素直に実行しているだけ。シンプルで純粋な表現を目の当りにしたら、誰もが近藤とコンドルズに惚れてしまうのだ。

コンドルズ日本縦断大進撃ツアー2016 「GIGANT~ギガント~」 刈谷スペシャル公演 ◎2月11日(木・祝)17:00 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール 全席指定 大人6000 円 こども(3歳~小学生)3000 円 中京テレビ事業 http://cte.jp/ コンドルズ http://www.condors.jp/

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