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性を超えた濃厚ラブ&サスペンス


尾張名古屋セニョールズの作・演出にして看板スター、エレガント浜田の話には目からウロコが落ちすぎて、演劇的視界がパーッと澄み渡るような痛快さを覚えた。どこか詩的な響きもある新作「鉄と夜風と美人姉妹」は、奇妙な愛と悪に支配されたエロス&バイオレンス&ナンセンスな物語。そして、出演するのは性を超越したセニョール=オトコ4人だ。

「中学生、高校生のようなことを大の大人がやります。台詞も、くっさいのばっかりだよ(笑)」と浜田。

地域限定のエロ漫談師・今池ヴァオイレット(以下ヴァッティ)は、浜田の名パートナーとしてもすっかり定着してきたが、今回はピュアミートボールズこと“わっちょ&もっちゃん”の両人が、歌謡ショーだけでなく芝居にも本格参戦する。

「わっちょには狂言回し的な存在にもなってもらおうかと。ヴァッティは劇中でもエロ漫談師で、カナメの役です。あとは、もっちゃんと僕がどれだけ遊べるか……。芝居を作り込むというよりは、別の方向のアプローチになるので、ともかく台詞を通じて舞台の上で生きてもらうしかないですよね」

気になる中身は、浜田いわく「ひとりの女性を取り合う純愛物語」。ある意味ごく単純だが、聞けば聞くほど奇っ怪さを増していく。ミス日本に選出されるほどの美人姉妹の、姉ルミ=もっちゃん、妹レイコ=わっちょ。この図式がまず、にわかに呑み込みがたい。ルミは足助の養蜂場でハチミツ作りをしていて、浜田演じるパティシエのシゲちゃんと婚姻届けを出したばかり。一方のレイコは、今池で介護用ロボットを製造している科学者だ。物語は、レイコの科学室で開かれた結婚パーティの場面から始まる。

「介護用ロボットは、戦闘能力はゼロで、一般男性並みの力しかないの」

浜田が付け加えた、この情報は一体? コレが後に意味を持ってくるうえ、いよいよ浜田のクレイジーさに打ちのめされる!?

「その頃、今池では美人ばかりが襲われる強姦事件が多発しているんですけど、当事者から被害届の出る気配がない。しかもこの連続騒動は『今池美女メロメロ事件』とうたわれ、被害者が犯人と再会したがるという社会現象にまでなっていくんです」

ストックホルム症候群とも違う異様な展開。そして自らを“夜風”と名乗る犯人の魔の手は、ついに絶世の美女ルミにも忍び寄る。愛する彼女を守るべく、シゲちゃんは介護用ロボット“鉄ちゃん”と合体して闘うことに……。もう、このあたり中島らもの小説「酒気帯び車椅子」かと見紛うほどブッ飛んでいるが、浜田はいたって冷静に含蓄のあるひと言。

「ロボットは暴走しないけど、人間は暴走する可能性がある。遠隔操作ができるようになっている鉄ちゃんは、さっきも言ったとおり、一般成人男性並みの力しかないんですけど、いざという時には自爆もできる仕組みなんです」

なんか、コワイよ! さらに浜田の言葉が、おののく筆者に追い打ちをかける!!

「今回は『鉄の閃光』と『風のヴァイオレット』という新曲があって、オープニングで歌う『風のヴァイオレット』で、今から始まるお芝居の内容をほぼ言ってしまいます。そもそも新曲2曲を聴いたら、すべてわかるという……(笑)」

優れたオーバーチュア、序曲は、冒頭にあって作品全体を表していると言うが、その構造に当てはまっているということか。確かに演劇の本質とも合致していて、どんな物語かを知る喜びや驚きは、それほど重要ではない。例えば「ロミオとジュリエット」は、よほどの新演出でもない限り、終幕には必ず死ぬことを私たちは知っているのだから。

なお、第1部には浜田おなじみのキャラクター「歯前リカ」や、ヴァッティのエロ漫談、ピュアミートボールズによる「妹を探す美人姉妹」といったネタがあり、それらは第2部の芝居とも関係していくから面白い。もちろん大人気の歌謡ショーもあり、芝居の結末を吹き飛ばすほど華やかなフィナーレが待っている。

尾張名古屋セニョールズ 「鉄と夜風と美人姉妹」 ◎1月21日(木)・22日(金) 19:30 TOKUZO 前売2500円 当日2800円 ※飲食代別途必要 http://pashiritz.jimdo.com

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