大竹敏之「コンクリート魂 浅野祥雲大全」出版記念トークライブ拝聴
名古屋在住のフリーライターにして、名古屋カルチャーを全国に喧伝する立役者、大竹敏之が書籍「コンクリート魂ー浅野祥雲大全」を発表した。浅野祥雲は、名古屋を拠点に昭和初期から40年代にかけて精力的な創作を行ったコンクリート像の造形家。東海地方在住であれば愛知の五色園や桃太郎神社、岐阜の関ヶ原ウォーランドなどで実際の像を見たことがあるかもしれないし、大竹が出演したTV番組「タモリ倶楽部」で存在を知ったという人もいるだろう。 祥雲の作ったコンクリート像は、比較的小さいものでも等身大、大きいもので10mにも達し、それだけで圧倒されるが、色彩がまた鮮やかで目を奪われる。しかも遺作の量が500体以上というから驚き。そんな祥雲と遺されたコンクリート像の数々に、著者の大竹は20年ほど前から興味を持ち、ライフワークとして独自の調査、研究を続けてきた。それが念願かなって1冊の本になったわけだ。 去る10月には名古屋・矢場町で出版記念トークライブが敢行され、会場には熱心な大竹ファン、祥雲ファンが集まった。ライブは、同著の編集担当、青月社の小松久人氏を迎えて開催。著者と編集者、二人三脚の苦労話、制作秘話が次々と飛び出す。 点在する作品の設置場所を案内するため夏の盛りに汗だくで歩き回って地図を作成したり、1枚の写真を頼りに数多あるブログをしらみつぶしに当たって作品の所在地をつきとめたり、なぜか口の重い遺族から少しでも証言や資料を得ようと奮闘したり……。エピソードのひとつひとつが感動モノのはずなのだが、聴く側は爆笑の連続! これも祥雲センセイのお人柄によるものとしておきましょう。 もちろん大竹・小松両氏の人柄もにじむライブはなごやかに進み、笑いながら同時に考えさせられることもあって、充実の時間はアッという間に過ぎ去った。アート、信仰、表現、編集……、様々な視点から学ぶことだらけで、大いに刺激されて帰路についたのであった。 ◎大竹敏之著「コンクリート魂 浅野祥雲大全」
青月社
2000円(税別)