大西功一監督が稀代の三味線奏者・高橋竹山に迫った「津軽のカマリ」

November 20, 2018

 

あらたまって演奏会に行ったことがなくても、津軽三味線をテレビで見たり聞いたりしたことのある人はいるだろう。本来は民謡の伴奏として青森県・津軽地方で広まったが、近年は吉田兄弟など独奏で活躍する音楽家も増えた。津軽三味線を伴奏の立場から解き放った先駆者は初代高橋竹山(1910―1998年)。そして今は亡き奏者に迫ったドキュメンタリーが「津軽のカマリ」だ。この映画を観ると、まず竹山の音色に魅了され、バチの柄まで使う奏法に驚き、ライブハウスで音楽を聴いているかのように「イェイ」と声を掛けたくなる。同時に盲目の彼が歩んだ人生、津軽の風土を知ると、その過酷さに絶句してしまう。大西功一監督に話を聞いた。
 

「今から20年前の12月、初めて東北を旅したんですよ。鈍行列車で各地を巡り、雪に足をとられながら、たどり着いたのが十三湖。この湖は日本海に続いていて、接点にある橋に向かったところ、そのあたりでは珍しい流氷も見ることができました。他にも、鯨の死体を思わす廃船に出会ったり。演歌でイメージされる世界ではなく、壮大な大自然を目の当たりにして圧倒されました。そこで、いつか津軽を撮りたいと思ったんです」
 

津軽初訪問が初代竹山の亡くなった年であるのは運命だろうか。それから十数年が経ち、次回作を考えていた頃、大西は竹山の生地・東津軽郡平内町小湊を故郷にもつ友人の案内で竹伸会の稽古を見学。竹山の弟子たちが立ち上げたこの会で、孫の高橋哲子や弟子の八戸竹清と出会う。もともと竹山に興味のあった大西は、一方でイタコにも関心を持っていた。かつて津軽では、目の見えない男はボサマと呼ばれる門付け芸人に、女はイタコ(巫女)になるのが一般的だったという。イタコの唱える呪文のような、唄うような声の音源を持っていて、それに惹かれている話を孫の哲子に大西がしたところ、孫の哲子に「ばっちゃ(おばあちゃん)はイタコだった」と告げられ、竹山の妻・ナヨが使っていた儀式の道具などを見せてもらうことができた。こうして津軽と竹山は分かち難いものとなり、本作が動き出す。
 

「津軽のカマリ」(C)2018 Koichi Onishi 


 

大西は「竹山の三味線には、個人の体験だけでなく、津軽の人たちが体験してきたことも表れている」と感じ、竹山の人生と津軽の歴史、双方の苦難をシンクロさせながら制作を進めていった。明治生まれの竹山は幼少期の病が原因でほとんど目が見えず、いじめられて学校に通えなくなり、生きていくために三味線を習得。民家の軒先で弾き語りをする門付け芸人となるが、実態は物乞い同然だった。福祉なんてなかった時代のこと、辛く苦しい経験を重ねるが、皮肉にも不遇の時代こそが初代高橋竹山を生み出したとも言える。
 

「1965年生まれで、ビートルズ以降の世代である僕にとって、音楽を聴くためにお金を払うのは当たり前のことです。でも竹山を取材して、人間、音楽、芸能の本質が見えてきた。そういう観点で竹山はピカイチでしょう?もともと僕はロックが好きですけど、ロックやジャズを好きな人たちが反応したことで竹山のブレイクにつながった。だから、60代以上の方には馴染み深いと思いますが、若い世代にも知ってほしくて。竹山は埋もれていい人じゃないんです」
 

「津軽のカマリ」(C)2018 Koichi Onishi


 

民謡歌手・成田雲竹の伴奏者として活動していた竹山だが、1963年にキングレコードから「津軽三味線高橋竹山」を発売。2年で7万枚のヒットを飛ばし、50代にして独奏でも地位を確立した。しかし大西は敢えて成功後の晩年に触れていない。また音楽評論家などは頼らず、あくまで在りし日の人柄や稀有な逸話といった竹山のカマリ(匂い)を知る人々の証言を追い求めた。中でも二代目高橋竹山は最重要人物。本人不在で制作するドキュメンタリーに不安もあった大西だが、彼女を後半の軸にすることで全体の構成が固まったという。ちなみに、前作「スケッチ・オブ・ミャーク」では沖縄・宮古島の老人たちを訪ね、古代の唄やかつての島の暮らしを取材した大西。やはり音楽への志向が強いのか?
 

「本当のことを知りたい、見たいという想いは常にあるので、音楽に対しても本当の唄を聴きたいだけなんですよ。そうしてみると、“祈る人”の音には通じるものがあるなと感じます。宮古島の唄と同様、竹山にも神々あるいは宇宙とつながるものがあるんでしょうね。津軽、青森の歴史には飢饉など悲劇が多いけれど、ねぶた祭りのダイナミズムが対照的に存在する。日本の規格サイズからはかけ離れたスケール感がありますよね」
 

なお、映画公開に先駆けて二代目高橋竹山の名古屋公演が決定!津軽三味線の凄さを生で聴かせてくれる。合間にはきっと初代の思い出話にも花が咲くはず。会場はライブハウスTOKUZOなので、お酒片手に濃密な空間を味わい、気分が乗ったら「イェイ」の掛け声をぜひ!!
 

◆「津軽のカマリ」
◎12月22日(土)~、名演小劇場にて公開
【大西功一監督による、初日舞台挨拶開催予定】
http://tsugaru-kamari.com/


◆二代目高橋竹山ライブ&トーク
「初代高橋竹山を語る。弾く。歌う。」
出演:二代目高橋竹山 ゲスト:大西功一監督
◎12月17日(月)18:00開場 19:00開演
TOKUZO
前売3800円  当日4000円
http://www.tokuzo.com/


★鑑賞券付チケット4800円あり。映画津軽のカマリ』(会場は名演小劇場限定)と12/17(月)のTOKUZOライブを鑑賞可能。名演小劇場、TOKUZOでのみ取扱い。

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