戦中の実話を戸田恵梨香&大原櫻子W主演、平松恵美子監督で映画化

February 8, 2019

 

「疎開保育園」という言葉を初めて聞いた。第二次世界大戦末期、東京の保母たちが独自の判断で園児を連れて集団疎開した偉業。この実話をもとに「あの日のオルガン」は製作された。あまり知られていない歴史の映画化について、監督・脚本の平松恵美子に聞いた。
 

「1982年にシネマとうほくの鳥居明夫さんたちが映画化に奔走されたんですけど、資金が集まらず頓挫したそうです。ただ、鳥居さんは奥様が保育士で、近年の子どもを取り巻く環境を憂いていらしたことから、この企画を思い返したといいます。私が原作本をいただいた時もまた予算が足りず頓挫しますが、プロットは書いたのでお渡ししてありました。それで3年ほど前でしょうか、プロデューサーに李鳳宇さんも加わり、正式に動き始めたんです」
 

(C)2018「あの日のオルガン」製作委員会


 

平松は山田洋次監督のもとで助監督や脚本を務めてきた実力者。2013年には「ひまわりと子犬の7日間」で監督も経験した。そんな平松をしても「戦中を描く時代劇なので、衣裳やセットに予算が掛かることを考えると、いかにコンパクトに、効果的に脚本を上げるか苦労した」と本音を漏らす。また、戸田恵梨香と大原櫻子のW主演にも脚本が絡んでいる。
 

「原作に戸田さん演じる楓のモデルになった先生がいて、怒りだしたら手がつけられない方だったんですけど、そこに魅力を感じました。今の時代、面と向かって怒る人は少ないですよね。だから、ヒステリーではなく愛情を持ってきちんと怒る人が魅力的に映ったんです。ただし、強い人が引っ張っていくだけの物語は面白くなりにくい。そこで大原櫻子さん演じる野々宮光枝(みっちゃん先生)を登場させました。彼女は楓にも引っ張り回されるし、自らも周囲を引っ張り回す。そこにユーモアがうまれ場を和ませる存在となります」
 

東京大空襲前の1944年。戸越保育所の主任保母・板倉楓(戸田恵梨香)は、戦況悪化が見込まれる中で子どもたちの豊かな育成は難しいと考え、保育所全体での疎開を所長(田中直樹)に進言する。それに愛育隣保館の主任保母・柳井房代(夏川結衣)も賛同。新米の野々宮光枝(大原櫻子)らを派遣してくれた。幼い子どもと若い保母だけの疎開に反対する親もいたが、B29の攻撃が本格化。53人の子どもたちと共に埼玉県への疎開が決行された――。
 

(C)2018「あの日のオルガン」製作委員会


 

「『駆込み女と駆出し男』を観たとき、作品もですが戸田さんをいいなと思ったんです。それで今回怒ってばかりの役も戸田さんならと思い、『楓は当時めずらしい先進的な考えを持った女性で、耐え忍ぶ女ではなく、自ら行動する人なんです』と出演依頼したところ、受けてくださった。戸田さんは自分の中に太い幹があってブレない。また、表現が深くて陰影があります。あの年齢であそこまで表現できる俳優はなかなかいないですよね」
 

楓は行動派で、ある種コワイ女性だ。彼女の視線は理不尽な社会にも向けられていて、その怒りは哀しみと表裏一体。怒った顔の美しさは、奥に涙が隠されているからだと感じた。一方、大原は対照的なみっちゃん先生を熱演。俳優と両立してきたミュージシャンの才能も発揮している。
 

「大原さんは日本大学芸術学部で演技を学んできた経歴からして、もっと芝居をやりたい人ではないかと。保育士に憧れていた時期もあったそうで、今回の出演につながりました。大原さんは恋愛物に出ることが多かったので、そうではない人間性の出た本作での演技は、また違ったものになっていると思いますよ」
 

橋爪功(右)が疎開先の世話役、近藤作太郎を演じている
(C)2018「あの日のオルガン」製作委員会 


 

ちなみに、みっちゃん先生役の大原、よっちゃん先生こと神田好子役の佐久間由衣が、別れの際、自転車を二人乗りしながら童謡「この道」を歌うシーンはひとつの山場だ。ところが、大原と佐久間は旧式の自転車に悪戦苦闘。おかげで、監督自ら身体を張って安全性を確認した。苦労という点では、子どもたちの指導も大変だったのではないだろうか。
 

「自然な表情を引き出すため、子どもたちはあまりコントロールしないよう心掛けました。本当のきょうだいを何組か交ぜることで自然と面倒をみる状況を作ったり、時おりスパイスを効かせるため勘のいい子に『今から君に任務を授ける』とか言って(笑)、障子に穴をあけさせたり。想定外だったのは、田中直樹さんが子どもを次々と抱っこするシーン。3回ぐらいテストしたんですけど、誰を選ぶか決まっていないので子どもたちはドキドキしながら待っていて、抱き上げられたらキャーキャー喜んで(笑)。あれは意外な成功でした」
 

平松監督は深刻な題材でも笑顔が絶えず、言葉も率直で軽やか。しかし「あの日のオルガン」には、生と死、日本人と戦争、女性と仕事……、様々な問題が織り交ぜられている。何より、文化的豊かさを放棄しないことは人間の生命線だと痛感。私たちには衣食住同様、花や音楽、もちろん映画だって必要なのだという想いを強くした。
 

 

「あの日のオルガン」
◎2月22日(金)~、ミッドランドスクエアシネマほかにて公開

https://www.anohi-organ.com/

 

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