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今年のインディペンデントは絶妙なバランスが実現


「最強の一人芝居フェスティバル」をうたう大阪発のイベント「INDEPENDENT」が、昨年に続きナビロフトで開催される。この「INDEPENDENT:NGY 18(インディペンデント ナゴヤ 18)」には、東海地区を対象に公募で選ばれた4作品と本拠地・大阪の劇場インディペンデントシアターで高い評価を得て招聘された2作品、計6作品が登場。1ステージで3作品ずつ上演され、1日通し券を利用すれば全作品をお値打ち料金で鑑賞できる。特に今回は若手、中堅、ベテランの役者、劇作家、演出家がバランス良く参加しているので、すべてを見比べれば当地の演劇シーンの現状も実感できそうだ。

開幕に先駆け、東海勢を代表して「クラベール」の作・演出を手掛ける山形龍平、「パレード」の出演者・河内愛、「東京ナガレ者~おっかさん版~」の出演者・山口未知が取材に応じてくれた。山形は役者として活躍するかたわら劇団「タツノオトシドコロ」で腕を磨く新進作家、河内は演劇組織KIMYOの若手、そして山口は当地を牽引する劇団B級遊撃隊の看板女優。所属劇団も当人たちもキャリアに差がある3人に、参加の動機から聞いてみた。

山形「僕自身、一人芝居を演じたことがあり、また落語をやったことも面白い体験として残っていました。それが書く側、演出する側になったらどうなんだろう?という好奇心につながり、挑戦することにしたんです。母と子の物語という構想は以前から考えていたもので、一人芝居に合うと思い始めたら勢いで書けました。自分の母がパワフルで面白い人なので、特別な想いもありましたし。大勢が登場する芝居を書く時より、思い描いたことすべてを出せる感覚はありましたね。ただ、僕は女性の目線をわかっていないところがあるようで(苦笑)、出演の岩田千鶴さんに意見をもらいながら台本を練り上げています」

河内「5年ぐらい前からINDEPENDENTは観ていました。また、一度だけセルフプロデュースで一人芝居をやったこともあるんですが、その時にひとりで全部やる限界を感じて。それで、今回の応募に向けて宮谷(達也)さんに作・演出をお願いしてみたら、受けてくださったんです。宮谷さんには自分からレジメものようなものも渡したんですが、ニュースなど見聞きする中で私自身が感じていた『揺るぎない正義はどこからやってくるのか』という問題が芝居の大きな要素になっていきます」

山口「昨年のINDEPENDENTで上演された『東京ナガレ者』の“おっかさん版”をやるんですが、これは20年ぐらい前に私が演じた作品です。でも劇場での正式な公演ではなかったので、自分の中で達成感のない作品でもあって……。同じ台本とはいえ登場人物の男女も違うし、神谷(尚吾)君が演出をやってくれることになったので、応募してみようと。もし選ばれなくても、観客の前でちゃんと上演しようという空気にはなっていたんですよね」

左から山形龍平、山口未知、河内愛、小熊ヒデジ

会場であるナビロフトの劇場プロデューサーとして運営に携わる小熊ヒデジによれば、東海地区の応募数は前回より増え、競争率もアップ。小熊が「参加者には、観客から見比べられることも含め楽しさを感じてもらえたら」と語るとおり、勝ち負けはないにしても、選考段階から一種の闘いはある。そこで3人に各自の“強み”をアピールしてもらうと……。

山形「『怖いもの見たさ』の気持ちで来ていただけることでしょうか(苦笑)。僕らは『当たって砕けろ』の精神でいますから。それでも、名古屋にはなかった企画に参加できることは嬉しい。岩田さんは久しぶりの舞台出演なので、たくさんの方に観ていただきたいです」

河内「演劇組織KIMYOは中堅の先輩が多いので、入団3年目の私は、普段の公演では若手ひとくくりの中で扱われてしまいます。でも今回は新人の中から一歩前に出て、宮谷演出をしっかり受けられるチャンス。劇団公演は作り込んだ派手な舞台が持ち味ですけど、この機会に宮谷さんの世界をひとりでどこまで表現できるのか、試したいと思っています」

山口「オバサンでも頑張っている、台詞も覚えられるよ、という点ですね(笑)。一人芝居は、間や台詞回し、強弱のつけ方など、役者のすべてが試される。演出家の目も一人に集中しますから苦労やプレッシャーも大変で、やりたいと思っているだけではできないんです。それでも今回、崖から飛び降りてみたからには、恥ずかしくない舞台にしたい。ただ、神谷君の負けん気は知りませんが、私は大らかに取り組んでいますよ(笑)」

ナビロフトで行われた取材会の様子

なお、取材会に出席できなかった堀越千晶からはメッセージが届いた。拠点の三重県以外で初めて公演する堀越は緊張もしているそうだが、出品作「サウンドオンリー」を伝える言葉には演劇的野心がみなぎっている。

堀越「今回演じる女の子は、日常にあふれる音、逃れようのない音が気になってしまう女の子です。彼女の中に積み重なった音や、日常や、ある人のことや、それら全部が爆発した時、彼女は宇宙に逃げ場所を求めます。劇場空間に圧倒的な無音を創り出したい、それが彼女の求めた世界です。その一点に死力を尽くしたいと思っています」

すでに優秀と認められた招聘作品「イーハトーヴの雪」「さようならば、ばら」のように、東海勢の作品も大阪本選を経て全国公演という可能性は十分にある。さらにINDEPENDENTは海外進出も予定しており、参加する各地の演劇人たちの夢もまた広がるばかりなのだ。

INDEPENDENT:NGY 18 (インディペンデント ナゴヤ 18) ◎6月16日(土)・17日(日) ナビロフト

<上演作品> [a]「クラベール」 出演:岩田千鶴(gateau au fromage)×脚本・演出:山形龍平(タツノオトシドコロ) [b]「パレード」 出演:河内愛(演劇組織KIMYO)×脚本・演出:宮谷達也(同) [c]「サウンドオンリー」 出演・演出:堀越千晶(劇団ごっこ)×脚本:竹内康介(同) [d]「東京ナガレ者~おっかさん版~」 出演:山口未知(劇団B級遊撃隊)×脚本:佃典彦(同)×演出:神谷尚吾(同) [e]「イーハトーヴの雪」招聘作品from仙台 出演・脚本:井伏銀太郎(Gin's Bar)×演出:西澤由美子 [f]「さようならば、ばら」招聘作品from大阪 出演:佐々木ヤス子×脚本・演出:早川康介(劇団ガバメンツ)×音楽:福島大

<開演時間&演目> 6/16(土)15:30~ [c][d][f] 6/16(土)18:00~ [a][b][e] 6/17(日)11:00~ [a][b][e] 6/17(日)13:30~ [c][d][f]

<料金> 1日通し券(終日全6作品観劇可):前売3000円 当日3300円 1ブロック券(1ブロック3作品観劇可):前売2000円 当日2300円

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