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スーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」を御園座で観てきました!


新劇場開場2カ月目を迎えた御園座では、スーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」が5月27日(日)まで公演中。国民的漫画「ONE PIECE」を歌舞伎化した同作は東京、大阪、博多と上演を重ねる度に反響を呼び、これまで34万人を動員してきた。そんなヒット作を観劇してみると、愛読者ならずとも胸が熱くなる趣向にあふれ……。今回その体験をレポートします!

物語は、麦わらの一味がシャボンディ諸島での戦いで世界各地に吹き飛ばされてしまったところからを描く「頂上戦争編」がベース。ひとりになったルフィは兄エースの処刑宣告の知らせを聞きつけ、救出のため海底監獄、さらには海軍本部へ乗り込もうとする。

Wキャストのキャラクターが複数あり、4パターンの配役で鑑賞可能。筆者はルフィ=尾上右近、イワンコフ=浅野和之、サディちゃん=坂東新悟、マルコ=中村隼人、シャンクス=市川猿之助の回を拝見した。スーパー歌舞伎Ⅱの司令塔として演出まで手掛ける猿之助もルフィに配役されているが、昨秋、猿之助が大怪我で休演した際、残る73ステージの代役を果たして称賛された右近のルフィをぜひ観たかったからだ。

アクシデントを乗り切った東京公演の勢いそのままに4月・大阪、5月・名古屋と若手の活躍が続く中、右近には確かに目を奪われる。声が漫画の世界と合っていて、ルフィの真っ直ぐな人柄が純粋に伝わってくる。絶世の美女にして女海賊のボア・ハンコック役を早替わりで演じたり、見得を切ったり、歌舞伎らしい手法でも観客を沸かせるが、ルフィが花道を全力疾走する姿はウソみたいに速く、問答無用に美しい。また、ゆずの北川悠仁が楽曲提供した主題歌「TETOTE」に合わせて宙乗りする場面も、夢や希望、勇気、青春……などポジティブな感情が全身で体現されていて、年齢に関係なく思わずグッときてしまう。

猿之助が「全3幕を飽きさせない」と言ったとおり、1幕から飛ばし過ぎでは!?と驚くほど見どころ満載。LED映像などの最新技術もあれば、宙乗りなどの伝統技術も進化している。ゆずの二人による歌と観客参加型のタンバリン演奏でコンサートのノリを演出する一方、役者たちが客席を回ってハイタッチ。こんなことされたら好きにならずにいられない!そして圧巻は、歌舞伎でおなじみ、本水を使った趣向。文字どおり本物の水が滝となって流れてくる上、しぶきを散らす派手な立廻りも繰り広げられて場内の熱気は最高潮に。しかも、本水の演出は大海原をゆく物語にぴったりだ。

そもそも平面的だったりデフォルメ的だったりする表現という観点で、漫画と歌舞伎は相性が良い。こういったところにも、スーパー歌舞伎を“Ⅱ(セカンド)”と打ちだして継承し、進化させた猿之助の感性が冴える。同時に、先代の門弟である市川笑三郎がニョン婆で、市川猿弥がジンベエ/黒ひげ役で硬軟自在に脇を支えていたのも印象的。さらに、可愛くてたまらないチョッパー役の市川猿の存在も頼もしく、スーパーバイザーとなった市川猿翁の想いは過去も現在も飲み込みながら未来に進んでいるのだと感じた。

舞台は終始、カラフルでポップ。衣装や舞台装置、定式幕に至るまで「ONE PIECE」の世界がちりばめられている。なお、歌舞伎界以外の役者も参加しており、筆者が観た回では中性的魅力のイワンコフを演じた浅野がインパクト大。現代性も色濃く、仮に原作や歌舞伎を知らなくても、子どもから大人まで楽しめる娯楽作に仕上がっている。休憩含む4時間の超大作にも関わらず、心の底から「もう一度観たい!」と思える舞台だった。

スーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」 ◎5月27日(日)まで 御園座 S席20000円 A席18000円 B席10000円 C席6000円 http://www.misonoza.co.jp/

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