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長かった暗闇に“光”が差す……!


大川興業はこの14年、商標登録もしている暗闇演劇を制作してきたが、最新作「The Light of Darkness」は“ハーフブラックシアター”、すなわち半分だけ暗い演劇。暗所恐怖症の人にもやさしい同作は“光”が主役というから、ますます明るい? 大川豊総裁に尋ねた。

「現代では街中に光があふれていて暗闇を体感することがほとんどないので、光を意識することもありませんよね。でも光は生きていて、泣いたり怒ったり、喜怒哀楽がある。新作は、そんな光を主役にしたお芝居です。暗闇演劇を続けてきて、観客から『あの時の光がすばらしかった』と感想を言われることがあるんですけど、案外その場面は真っ暗だったりするんですよ(苦笑)。つまり、その光はその人だけに見えた光なんです。そこから観客は光を作ることができるんじゃないかと考え始め、観客の意識の中で“光る人物像”を作れないだろうかと思ったんです」

ただし、この光の操作が厄介なんだとか。

「今回は“光演劇”の難しさを感じてますよ。劇中に物が光るシーンがあるんですけど、やる度に光量が違うので見え方も違ってしまうんです(苦笑)。毎回、光の表情が変わってくるので、光の面白さも考えさせられましたね。光そのものが演技をしている感覚とでもいうのか。光は、実際に波なんだなとか粒なんだなとか思わされるし、特殊な表情を見せますよね。役者の喋るスピードにも影響を与えるので、光を中心に舞台を進行させると時空がゆがんでいくんです。このあたりは相対性理論と関わってくるところですね」

大川総裁と役者たちは、暗闇にも光にも苦戦しながら稽古の日々。なお、男性集団の大川興業だが、今回めずらしく女性が参加。元劇団そとばこまちの小椋あずきが客演する。

「寺田体育の日が演じる男とその妻が主人公なので女優が必要になったんです。しかも光る人がよかったので、小柄がいいなと。自論として、小さい生き物の方が発光する可能性がある(笑)。ダイオウイカよりホタルイカの方が光るみたいなことです(笑)。小椋さんは『奇跡の人』に子ども役で出たこともあるほど。小動物っぽくて怯え上手なんです(笑)」

舞台は、スキーブームに乗って建設されたリゾートマンション。いまや所有者の高齢化で辺りは閑散として、わずか10万円で売り出されている始末だ。かろうじて住む数人は、ある日突然、過去へとタイムスリップしてしまう……。

「これは苗場で取材した現実に基づいているんですよ。3LDKが10万円ですよ! 所有者の子どもたちはスキーをやらない世代。でも一万戸規模だから簡単に壊すこともできず、修繕も続く。だから10万円で買ったとしても、維持費が年間ナン十万もかかるんです。空には星が輝いているのに、マンションに灯りは見えない。こんな場所に出会えるとは思いませんでした。時間が止まって見えたし、過去がよみがえってくる感覚もあったりして……。でも、廃墟って過去のものになりがちですけど、きれいなんですよ。ちゃんと維持されている。それと、すごいエネルギーを感じました。むかし流行った映画『私をスキーに連れてって』の頃の建物ですから、バブル期の残り香みたいなものがあったんですよね」

ふと思わず、文明と文化の関係が頭をよぎるエピソード。私たちはずっと、未来の廃墟を造り続けているのだろうか。「The Light of Darkness」は、人類の歩んできた道とこの先を照らすのかもしれない。

「人は、月や星の光に話しかけることがありますよね。でも、コンビニの光に話しかけることはないじゃないですか。そして、そういう光というものに人間のスピードや時間感覚は影響されている。例えば蛍の飛び交うシーンがあれば、台詞もゆっくりになってしまうんですよ。本作では、光と時間の関係を踏まえ、過去・現在・未来を描こうと思っています。もちろん普通の夫婦の物語でもあるし、光に感情移入できる芝居にもなっています。誰でも心の中で光に話しかけることがあると思いますが、その時の感覚に通じるはず。月や星の光の不思議に想いをはせたり、あるいは故郷を思い出したりするかもしれませんよ」

大川興業 本公演「The Light of Darkness」 ◎10月14日(金)・15日(土) 金19:00 土13:00/18:00 前売3800円 当日4000円 学生(前売のみ)2000円 視覚障がい者割引(前売のみ・介助者も同額)2000円 ビッグ3トークライブ ◎10月16日(日)13:00 3500円 名古屋市千種文化小劇場 ※本公演・トークライブともに全席自由(整理番号付)。 http://www.okw.co.jp/

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